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究極の生体認証=虹彩認証を採用、World IDのOrbで味わう近未来の体験

2025.05.14 2025.05.14 17:28 IT
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World プロジェクトの「Orb」

●この記事のポイント
・World IDは、虹彩認証を活用した世界最大規模の個人認証プロジェクト
・実際のOrb体験を通じて見えてきた可能性と課題
・生体認証市場における虹彩認証の位置づけと今後の展望

 米OpenAIのCEO、サム・アルトマン氏らが2019年に立ち上げたプロジェクト「World」。4月30日に米国で開催されたイベント『At Last』では「Worldcoin (ワールドコイン:WLD)」「World App」などの新たな取り組みや新機能「World Chat」、新たなグローバルパートナーシップ「Razer」が説明され、話題を呼んだが、ユーザ認証の仕組みとして使用されているのが「World ID」だ。その精度の高さから「究極の生体認証」とも呼ばれる虹彩認証が採用されており、専用の虹彩スキャン装置「Orb」を用いて、個人の唯一性を証明するIDとして発行されるもの。このシステムの特徴は、生体認証データそのものを保存せず、暗号化された「虹彩コード」のみを使用する点にある。これにより、プライバシーを保護しながら、なりすまし防止や「1人1アカウント」の原則を実現している。

 プロジェクトの規模は急速に拡大しており、現在、1000万人以上がOrbによる虹彩認証を完了しているという。日本国内でも数十カ所の認証会場が設置され、着実に普及が進んでいる。そこで今回は実際にOrbを使ってWorld IDの発行、そして認証を体験してみた。

●目次

次世代認証技術としての虹彩認証

 指紋認証や顔認証はスマートフォンでおなじみだが、生体認証の世界ではより高精度な方式として虹彩認証が注目を集めている。虹彩認証が持つ優位性は、その安定性と信頼性にある。虹彩は年齢による変化が極めて少なく、生涯にわたって安定した認証が可能だ。また、非接触での認証が可能なため、衛生面でも優れている。さらに、なりすましや偽造が極めて困難という特徴を持つ。

 ただし、この技術にも課題はある。指紋認証と比較すると、専用の赤外線光源やセンサーが必要となり、導入コストが高くなる傾向にあるという点だ。また、照明条件や撮影距離によって認証精度が影響を受けることも指摘されている。

Orb体験詳細レポート

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今回訪問したOrb認証の会場

 実際のOrb体験は、完全予約制で行われる。筆者は都内の会場で体験を行った。まず必要となるのは、World公式アプリのダウンロードと事前予約だ(会場によっては予約が不要な場所もある)。

 会場に到着すると、公式アプリから「人間認証」をタップし、Orbを使った認証が開始される。

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 銀色に輝くOrbの存在感は圧倒的で、まるでSF映画から飛び出してきたかのような未来感を感じさせる。その前に立って眼鏡とマスクを外すと、顔全体や虹彩のスキャンが開始される。スキャンが終わったら、公式アプリで表示されるQRコードをOrbにかざし、人間であることを認証していく。全体のプロセスとしては15〜30分程度と、想像していたよりスムーズだった。

 スキャン時の緊張感こそあるものの、痛みや不快感は一切ない。むしろ、最先端技術との対話という非日常的な体験に、わくわくするような感覚すら覚えた。

生体認証の未来像

 虹彩認証市場は、今後も大きな成長が予測されている。この背景には、デジタル化の進展に伴う「確実な本人確認」へのニーズの高まりがある。特に期待されているのが、フィナンシャルサービスでの活用だ。デジタルバンキングや暗号資産取引、決済認証などの分野で、より安全な本人確認手段として注目を集めている。医療分野でも、患者認証や医療記録へのアクセス管理において、その精度の高さが評価されている。さらに、行政サービスでの導入も進んでいる。国民IDや出入国管理システムに導入されるなど、世界各地で実用化が進んでいる。

 世界最大規模の虹彩認証プロジェクトであるWorld IDが直面する課題は、そのまま虹彩認証技術全体の課題でもある。認証場所の限定性や導入コストの高さ、プライバシーへの懸念、さらには各国の法規制への対応など、解決すべき問題は少なくない。

 これらの課題に対し、World IDは透明性の確保を重視している。コアコンポーネントをオープンソース化して公開する他、第三者機関による定期的な監査を実施し、プライバシーポリシーの明確化にも努めている。同時に、認証精度の向上や処理速度の改善、セキュリティ強化といった技術革新も継続的に進められている。

 虹彩認証は、その精度の高さから「究極の生体認証」とも呼ばれる。World IDの取り組みは、この技術を世界規模で実用化する壮大な実験ともいえる。今後、メタバースやWeb3.0時代の本人確認手段として、虹彩認証の重要性はさらに高まるだろう。World IDの経験と知見は、この新しい認証技術の発展に大きな示唆を与えることになるはずだ。

(文=秋葉けんた/ITライター)

秋葉けんた/ITライター

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IT分野専門のライター。B2CからB2Bまで幅広く執筆し、事例制作も手掛ける。PDA時代からガジェットが大好きで、取材を通じて常に新知識を探求している。
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