ネイティブアドは新しい概念で、いまだその定義は揺らいでいる部分が大きいのですが、乱暴かつ大まかにその要素を定義してみると以下のようになります。
(1)掲載メディアの非広告コンテンツと、同じフォーマットで公開される。
(2)そのため、読者に広告物だと意識されることなく読まれる上、非広告コンテンツ同様、読者にとってちゃんと「読む価値のある」コンテンツである。
(3)スポンサーはそこで直接的に商品・サービスの訴求は行わないが、世界観をユーザーと共有することでブランドリフト効果を狙う。
ちなみにブランドリフト効果とは、ブランディング広告にユーザーが接することでもたらされる、好意度・購入意思などにおける意識変容効果を指します。ネイティブアドとよく比較されるのが、「記事広告」という手法です。日本でも雑誌や新聞などで広く一般的ですが、記事広告とネイティブアドの差は、記事広告の多くが「掲載メディアのコンテンツに似せてつくられる、スポンサーの意向が直接的に反映されたコンテンツ」なのに対し、ネイティブアドは「広告主によってスポンサードされた、掲載メディア主導でつくられるコンテンツ」という点にあります。
BuzzFeedの場合、ネイティブアドのコンテンツを制作するにあたって、スポンサーと編集部での話し合いが持たれます。そこでは、ブランドがコンテンツを通してユーザーと共有したい価値観について検討されます。具体例として、12年から現在まで継続して行われている自動車ブランド、MINIのケースをご紹介しましょう。
●MINIとBuzzFeedのネイティブアド成功事例
MINIはコンテンツを通してブランドポリシーである「Not Normal(普通・平凡じゃない)」をユーザーと共有することにしました。そこで、「Not Normal」な出来事や自然現象などに関するコンテンツをBuzzFeedで複数公開し、Facebookで2000を超える「いいね!」を獲得。BuzzFeedの記事は、ソーシャルメディア上の拡散を経て、多くの読者に読まれることに成功しました。
これらの記事に触れたユーザーのブランドリフト効果を計測したところ、次回の買い替え時に、MINIの購入を検討したいと答えるユーザーの割合が32.9%増加。MINIというブランドの印象で「楽しさ」を感じるユーザーが52.2%増加したという成果を得ました。単にブランディングが向上しただけではなく、具体的な買い替えの選択肢にする気になったというユーザーが増えたことは、ネイティブアドによるブランド意識変容の有効性を示しているといえるでしょう(データは、「BuzzFeed Case Study:MINI」より引用)。
●コンテンツと広告の境界を「正しく」曖昧にする
国内でも東洋経済オンラインが、企業スポンサーを受け入れつつ、読み物コンテンツとして編集部がしっかりと記事を用意する「ブランドコンテンツ」という試みを始めています。ブランドコンテンツの場合も、スポンサーの取り扱う商品・サービスの直接的な宣伝は行われません。
スポーツウェアのDESCENTE(デサント)とのコラボコンテンツでは『拝啓、燃え尽きランナー様』と題し、ランニング継続に失敗する理由などを紹介しています。ページの最下部からは、デサントのランニングに関するオウンドメディア記事へと導線が張られていますが、その飛び先もあくまでランニングノウハウを伝えるページで、ブランディング広告として活用されているのがわかります。
従来型バナー広告のクリック率の低下が叫ばれて久しいですが、ウェブメディア各社で「広告っぽさ」を捨てつつ「コンテンツの独立性」をうまく保つ方法として、ネイティブアド的なチャレンジが広がっています。
●株式会社アクトゼロ(http://www.actzero.jp/)
ソーシャルメディアマーケティング、コンテンツマーケティング、YouTube・Vineなどのネット動画プラットフォーム活用で、国内有数のクライアント実績を持つ。