注目したいのは、S5ではカメラにおいて「位相差フォーカス」機能を搭載することで、以前のコントラストAFに比べて格段に高速化されている。位相差フォーカスは、レンズを動かさずにピントを合わせるため、高速化できる半面、小型化が難しいとされてきた。ちなみに、どのぐらい高速化されているかというと、サムスン関係者によれば「従来機種ではピントを合わせるのに要する時間が約1秒なのに対して、S5においては約0.3秒となった」という。また、高速化に加えて、撮影後の写真のフォーカスを変更できるオムニフォーカス機能も搭載している。
●オンラインショッピングも意識したセキュリティ機能
また、セキュリティ強化のために指紋認証機能を搭載している。指紋認証機能はアップルのiPhone 5sが先行して搭載しており、今後はスマホに広く搭載されるようになる可能性がある。
この機能はスマホの電源を入れる際、ロック解除などに使うことが一般的だが、S5ではインターネットショッピングで、オンライン決済サービス「PayPal」によって決済を行う際にも使用できるようになっている。
PayPalは、サムスンのスマートウォッチGALAXY Gear 2にも対応している。4月に開催された新経済連盟主催のグローバル経済サミット「新経済サミット2014」において、PayPalグローバルプロダクトソリューションズVP(副社長)のキャリー・コラジェイ氏が「あらゆる場所で買い物ができるようにしていきたい」とGear 2にモバイル決済機能を提供した理由を説明しており、PayPalもモバイル決済に意欲的な様子がうかがえる。
現在、日本メーカーが製造するスマホの決済方法としては、おサイフケータイ機能があるが、これはコンビニなどでの低額決済が主な使われ方だ。しかし、PayPal決済に対応することで、より高額な決済もスマホで済ませられるようになれば、財布やクレジットカード代わりとして、また新しい利用分野を開拓していくことだろう。
もはや、進化する余地はほとんど残されていないともいわれるスマホだが、S5はカメラ、セキュリティ、オンライン決済などで新機能を追加し、新しい価値を提案している。特に指紋認証によるPayPal対応オンラインショッピングは今までにないものだ。今後のスマホは単純なスペックアップだけではなく、さまざまなサービスとの連携を深めて進化していくことになるのかもしれない。
(文=一条真人/ITライター)