祇園の“おもてなし”をIT化!?にみるSNS成功のヒント
――祇園というと舞妓さんでしょうか?
深田 そうですね。まず舞妓と芸妓が違うのはご存じでしょうか? 舞妓は修業段階で、レベルが上がると芸妓になります。普通の人はあまり知らないんですが、帯の長さや、紅の付け方など、見た目からして違う。舞妓は「置屋」という、タレントでいう所属事務所で共同生活をしていて、「お母さん」と呼ばれる育ての親が着物代や生活費を全部みて彼女たちを育てる。
「お兄さん」と呼ばれる一般のお客さんは、エージェンシーである「お茶屋」に舞妓のセッティングを頼むと、その話がお母さんに行って、よしなにアレンジしてくれる。その際、「いちげんさん」はダメで、別のお兄さんに紹介してもらわなければいけない。お母さんの審査が入って、あとで断られることもある。祇園には、こうした関係性があります。
――初期のmixiなどと同じで、招待性のコミュニティーなのですね。
深田 それにはいくつか理由があって、例えば、お金よりも信頼性が大事という哲学があります。掛け払いだったり、女性所帯だったり、その人のことをよく知らないといいおもてなしができないということから、基本的に信頼関係が築けなさそうな人は、いくらお金を払っても相手をしない。
数世代という、かなり長い関係性を見越しているんです。よく「ライフタイムバリュー」といわれますが、世代をまたぐ祇園は「ジェネレーションライフタイムバリュー」です。おもてなしのためにたまっていく個人情報に対する扱いも超厳格。どちらかといえば家族的なつきあい方なのです。
顧客に対して投資する考え方も持っています。将来有望な京大の学生さんだけど金がない。じゃあ「タダでいい」と、置屋さんが声をかける。逆に常連さんが、出たての舞妓を育ててやると見込んでガイドしたり、「お花代」として有給をあげたりすることもあります。
アナログ世界のゲーミフィケーション
――お互いが育て合う関係性なのですね。
深田 そうですね。もちろん舞妓はサービスプロバイダーなので、茶道、華道、唄、舞、着物などに関して、住み込みでハードな教育を受けます。そしてお客さんに合わせて、もてなし方も設計する。場合によっては、お茶屋さんも一緒になって宴席を入念に準備します。一方で、客の側にもトレーニングが求められていて、そうした芸は鑑賞眼を持っていないと理解できないし、祇園のコミュニティーでもモテなかったりする。もっというと、男としての器が大きくないとダメ。
舞妓はサービスプロバイダーとして、ホスピタリティ(おもてなし)のマスターを目指す。お兄さんは、ジェントルマンのマスターを目指す。「祇園に行って男を上げろ」という言葉もありますよね。こういうサービスプロバイダーとお客さんの関係は、美しいじゃないですか。アナログの世界ですが、実はゲーミフィケーションを使った好例だと思います。
――ゲーミフィケーションを使えば、ネットでも祇園のような関係性が構築できるという?