海外では常識!? 個人のスマホを仕事で利用、日本でははやる?
数千台を一挙に導入したという例から、社内の一部部署で数台だけ使っている例までさまざまだが、なんらかの形でスマートデバイスを業務利用する企業は、今後も増えて行きそうだ。
そうした中、注目を集めているキーワードが「BYOD」だ。これは「Bring Your Own Device」の略で、口語的にいえば「自前端末の持ち込み業務利用」のことを指す。要するに、私的に保有しているiPhoneなどで会社のメールを見たり、スケジュールチェックをしたりするような使い方だ。
海外ではかなり採用している企業が多いが、日本ではあまり聞かない。ジュニパーネットワークスが発表している、モバイル端末の業務利用に関する調査によると、個人所有の端末を業務利用しているというユーザーの比率は、日本では33%にとどまったという。世界全体で見た時は56%だ。他の調査や識者の見解でも、日本は諸外国に比べてBYODの導入は少ないという。(http://www.juniper.net/jp/jp/company/press-center/press-releases/2012/pr_2012_05_22-15_00.html)
海外では、あらめて考えるまでもない「BYOD」
BYODを取り入れることが良いか悪いか、取り入れているほうが進んでいるのかどうか、という議論は別にして、海外と日本の状況差はどこから来るのだろうか?
まず「個人の所有物を仕事で使う」という行動自体への慣れの問題がある。アメリカなどでは、ノートPC等でも長く行われてきた手法で、今さらiPhoneやiPadを会社に持ち込んではいけないという感覚は薄いようだ。一方日本では、セキュリティの観点から、持ち込み端末の利用は禁止しているのが当たり前だった。個人の持ち物を業務に使うということに対する感覚に、大きな差がある。
ガートナージャパンのアナリストによれば、海外ではまず使ってみて判断する傾向があるが、日本では事前にリスクをすべて把握したがる傾向が強いのだという。PCで持ち込み端末を拒否してきた企業にとって、スマートデバイスはまだ正体不明で、どこまで許してよいのかわからない物なのだろう。(http://news.mynavi.jp/articles/2012/08/28/gartner/index.html)
何のために「BYOD」を採用するか?
警戒心の強い日本企業が、にわかにBYODに注目している理由はいくつかある。1つはコスト問題だ。スマートフォンを業務利用したいが、必要数だけ購入するのはつらい。そこで、個人所有の端末を使おうという考え方だ。しかし、持ち込み端末を安全に業務利用するためには、なんらかのソリューションが必要になり、結局コスト面ではあまり旨味がない話になってしまう。
もう1つの狙いは、管理負荷の低減だ。フィーチャーフォンとは違ってOSのアップデートが激しいスマートフォンをうまく利用するためには、こまめな対応が必要になる。画面が大きく、壊れやすくも見える。壊した時の買い換えや修理、OSのアップデートといった作業をエンドユーザーに丸投げできれば楽になるという考えだ。
これはある程度妥当な考え方ではあるのだが、業務利用中に壊れた場合にはどうするのか、業務利用しているアプリが新OSに対応するまでOSアップデートを禁止するのか、というような問題も出てくる。しかも、楽になるためのBYODのはずでありながら、管理の現場にいる情報システム部門の人々からは「かえって面倒だからやりたくない」という声もあるようだ。