2012年に民主党から自民党に政権交代して、経済政策ががらりと変わった。特にここ数年の大きな経済政策の変更点としては、13年4月からの金融緩和と14年4月からの消費増税がある。それらの変更により経済がどのように変わるかについて、多くのエコノミストが予測していたが、その結果について今月14日に発表された15年度経済財政白書に良く整理されている。
まず金融政策であるが、多くの識者は「デフレを脱却できない」としていた。ところが経済財政白書では、「消費者物価や国内総生産(GDP)デフレーター、単位労働コストが上昇するなど、デフレ脱却に向けた動きは着実に進んでいる」と評価している。
金融政策について安倍晋三政権は、黒田東彦氏を日本銀行総裁、岩田規久男氏を副総裁に据えて異次元緩和を引き出したので、政府の見通しとしては間違っていなかった。間違っていたのは多くのエコノミストのほうであった。
デフレ脱却をできないと予測していたエコノミストは、「異次元緩和によってハイパーインフレ、国債暴落になる」とも主張していたが、まったくの大外れとなった。次に、消費増税である。これも多くのエコノミストは政府の見解と同様に「影響は軽微である」と予測していたが、大きく外れた。
経済財政白書では、14年度の実質GDPは駆け込み需要の反動減で1.2%程度押し下げられたほか、税率引き上げに伴う物価上昇を受けた消費の減少も、0.5%程度の押し下げ要因になったと分析している。影響が軽微と予測した政府の経済見通しは、1.4%成長だったが、結果としてマイナス0.9%だったので、2.3%の予測ミスとなった。政府やその提灯持ちだった多くのエコノミストは予測を外した。
政府の中で甘い見通しの間違いにいち早く気がついたのが、安倍首相である。そのため安倍首相は今年10月に予定されていた消費増税を延期するために昨年末、衆議院の解散・総選挙に打って出た。その勝利で辛うじて再増税は延期された。1度目の消費増税は失敗したが、2度目の間違いは犯さなかった。
減税の必要性
今回の経済財政白書の分析は、概ね評価できる。過去の政策に関して失敗の本質でも書かれていると、もっと良かったであろう。