(「ウィキペディア」より)
だが今、そんな“未来都市”の姿は変わろうとしている。
先日も中央自動車道上り線・笹子トンネルで天井崩落事故が発生した。笹子トンネルは、1955年に建設を開始し、開通は58年。すでに開通から50年以上も経っているのだ。こうした高速道路やトンネルの老朽化は全国で問題となっており、なかでも首都高速は深刻となっている。
首都高速は、64年開催の東京オリンピックを控えて、突貫工事で整備された。総延長距離約300キロのうち、40年以上を経過した路線が約3割、30年以上を経過した路線が約5割にのぼり、深刻な老朽化に悩まされている。
その上、建設にあたっては既存道路や河川などの上空を利用したことから、急カーブが多い上に、追い越し車線となる右側車線からの合流もあり、加速・減速車線の距離も短いなど、“高速道路”としては非常に危険な設計となっている。
首都高速の事故率は、一般道の約3分の1と低いが、東名高速など他の高速道路に比べると約2.5倍も事故が発生している。
かねてより首都高速の再生を検討してきた国土交通省の有識者会議が、「老朽化した首都高速道路都心環状線は、高架橋を撤去し、地下化などを含めた再生を目指す」などの内容の報告書をまとめた。
近年ではニュータウン開発などで美観を重視して、電信柱を地下化する街作りが行われており、現在考えられている未来都市とは、どうやら鉄腕アトムで描かれた姿から変化し、高速道路も地中を走るものとなりつつあるようだ。
首都高速道路を地下化することにより、これまで上空にあった道路や河川などの空間が開放され、街の景観が一変する。日本でも以前から東京・中央区の日本橋の上を通過する首都高速の撤去し、日本橋とその周辺の水辺の景観を取り戻そうという運動が盛んになっている。
高速道路の地下化は、日本だけの問題ではない。すでに複数の国で高速道路の地下化が実施されている。例えば米国では、マサチューセッツ州ボストンで高速道路の地下化が行われた。91年から06年の15年をかけて、約13キロの高速道路が地下化された。高速道路があった地面には公園や緑地が作られ、さらにその沿道にはホテルやオフィスビルが次々に建設され。この地下化にかかった事業費は150億ドル(約1兆7000億円)にのぼった。
ドイツでは87年から93年の6年間をかけ、デュッセルドルフ市でライン川沿いにあった高速道路が地下化された。総事業費は当時のドイツマルクで4億8500万マルク(約450億円)。ライン川に、市民の憩いの場所を取り戻すという目的で行われたこの地下化では、ライン川に散策路が作られ、見事に景観を取り戻している。