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ラグビーワールドカップが日本を熱狂させたワケ…むき出しの闘争本能の裏にある規律と品位

文=山川徹
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ラグビー憲章の「情熱」「結束」「品位」「規律」「尊重」

 こうして振り返ってみると、ラグビーには選手が互いに健闘をたたえ、賞賛し合って、他者を思いやる文化が根付ているように思える。

 それは、ラグビーというスポーツが長年、大切に守ってきた「価値」に由来する。

 世界のラグビーを統括するワールドラグビーが掲げる「ラグビー憲章」に5つの「価値」が明記されている。「情熱」「結束」「品位」「規律」そして「尊重」の5つである。

 ラグビーは、見ての通り、肉体を極限まで鍛え上げ、ぶつかり、ボールを奪い合うスポーツだ。闘争本能剥き出しの姿は、原始的ともいえる。

 けれども、原始的な闘争本能だけでぶつかり合っていたら、やがてただの殴り合いのケンカになってしまう。だからこそ「規律」と「品位」が重要になる。

「情熱」がなければ、200センチ、120キロに迫る巨人にタックルできない。

 さらにラグビーは球技としては最多の1チーム15人でプレーする。一人ひとりが自分勝手に動いたら、チームとして機能しない。ここで必要になるのが「結束」と「規律」である。

 そして5つ目の「尊重」。

 ラグビーでは、100キロを超える巨漢にも、160センチ程度の小兵にも、200センチを超える長身にも、足が遅くても、さほどパワーがなくても、それぞれに特技や長所を活かせるポジションやプレーがある。個性が異なる15人が、ひとつのチームをつくる。だからこそ、ラグビーは多様性のスポーツなのだ。

 自分にはない特徴や個性を持ち、異なる役割を果たしてくれるチームメイトの存在なくしてはチームは戦えない。加えて試合をするには、最低でも15人の相手とレフリーが必要だ。相手チームやレフリー、応援してくれるファンを「尊重」しなければ、ラグビーは続けられない。

 そうしたラグビーカルチャーが凝縮されたのが、優勝した南アフリカキャプテンのシヤ・コリシの言葉だろう。母国で応援する貧民街に住む人やホームレスの存在にも触れて、彼はこう語ったのだ。

「私たちは異なるバックグラウンド、異なる人種が集まったチームだった。でも、ひとつの目標を持ってまとまり、優勝したいと思ってきた。それが証明できた。目標を達成したければ、異なる人種や文化を持つ仲間たちと協力し合えるということを……」

格差と分断が広がる現代ニッポン

 その言葉を体現して、日本に示したのが「one team」を掲げた日本代表チームである。

 改めて説明すれば、日本代表は、ニュージーランド、トンガ、オーストラリア、南アフリカ、サモア、韓国、そして日本の7カ国にルーツを持つ選手からなる多国籍チームだった。海外にルーツを持つ選手は31人のメンバーのうち、約半数を占めた。

 日本代表が、そして南アフリカ代表が、異なる文化や言語を持つ仲間とともにスクラムを組み、ひとつになれると証明した。

 日本は4月から外国人労働者の受け入れをスタートさせた。ラグビーのありようは、国際化が進み、他者との共生が求められる、日本社会の指針になるはずだ。格差と分断が広がり、他者の尊厳を踏みにじる言葉が飛び交う社会に暮らすからこそ、他者を尊重し、ルーツをこえてひとつの目標に向かう日本代表を、たくさんの人たちが応援し、熱狂したのではないかと感じるのである。

(文=山川 徹)

●山川 徹(やまかわ・とおる)
ノンフィクションライター。1977年、山形県生まれ。東北学院大学法学部法律学科卒業後、國學院大學二部文学部史学科に編入。著作に、『捕るか護るか? クジラの問題~いまなお続く捕鯨の現場へ~』(2010年、技術評論社)、『カルピスをつくった男 三島海雲』(2018年、小学館)、『国境を越えたスクラム ラグビー日本代表になった外国人選手たち』(中央公論新社)などがある。

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