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渡邉哲也「よくわかる経済のしくみ」

韓国、米国から「同盟国として不要」と最後通告…米国の言いなり外交、米中は準戦争状態

文=渡邉哲也/経済評論家

二股外交が限界を迎えた韓国

 中国は、南沙諸島周辺にいくつもの人工島をつくって領有権を主張しているが、これはいわゆるシーレーンの重要な位置にあり、世界の石油と天然ガスの約3分の1が通過するルートである。

 仮にそのエリアが封鎖された場合、日本に石油や天然ガスが入ってこなくなるだけでなく、太平洋を通過してアメリカに届くはずの資源もストップすることになる。

 アメリカの「航行の自由」作戦は、そういった事態を防ぐため、中国が領有権を主張する人工島の12海里以内を軍艦が横断するというもので、「人工島に関しては領有権を認めない」という国際ルールを守らない中国に対する強い威嚇行動である。

 この作戦に対して、韓国は「日本とアメリカ、それにNATO(北大西洋条約機構)の国際的な枠組み側につくのか、それとも中国側につくのか」という究極の選択を迫られ、前者を選択したわけだ。いわば、韓国の「二股外交」も限界を迎えたといえる。

 そして、昨年末の慰安婦問題における日韓合意である。この合意はアメリカ主導で行われた側面が強く、韓国にとっては「日米側につくか」、「中国を選んで北の脅威にさらされるか」という究極の選択であったといえる。

 昨年12月中旬に日米の情報筋は北朝鮮の核実験の情報を得ており、それを用いて韓国に選択を迫ったともいわれている。そこで、韓国は慰安婦問題で一定の妥協をすることで、日米側を選択し、THAADミサイル導入に関しても前向きの姿勢に変わったのだ。

 しかし、これまでの経緯から、日米は韓国を本質的には信用していない。これまでも韓国を通じて中国にさまざまな情報や軍事技術が流出している実態もあり、信用に値しないのである。ただし、地政学的に日本にとっては重要な意味がある地域のため、韓国を簡単に捨てるわけにもいかないのである。

 そして、北朝鮮は中国およびロシアとの関係もうまくいっていないという側面があり、経済的にもいつ暴発してもおかしくない状況にあるわけだ。そして、核実験に次いで、長距離弾道ミサイルの実験も行われようとしている。

 前述した拡大ASEAN国防相会議において、米中の防衛トップの会談は決裂に終わった。中国の強引な主張に、「航行の自由」作戦で対抗するアメリカ。この2大国は、いよいよ準戦時下に入ったともいえるだろう。そして、それは同時に、世界が再び冷戦の時代を迎えたことを意味するのかもしれない。
(文=渡邉哲也/経済評論家)

渡邉哲也/経済評論家

渡邉哲也/経済評論家

作家・経済評論家。1969年生まれ。
日本大学法学部経営法学科卒業。貿易会社に勤務し独立。複数の企業を経営、内外の政治経済のリサーチや分析に定評があり、政策立案の支援、雑誌の企画監修、テレビ出演等幅広く活動しベストセラー多数、専門は国際経済から金融、経済安全保障まで多岐にわたり、100作以上の著作を刊行している。

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