現在、世界ではAirbnb(通称:エアビー)をはじめとする「民泊ビジネス」が隆盛しつつある。旅行者にとっては異文化体験の促進やコストダウンが期待される一方、各国で法整備が追いついておらず、トラブルも少なくないといわれている。日本においても賛否両論が巻き起こっているが、韓国の実情はどうか。
2月17日、韓国政府担当者は、貿易投資振興会議の席で「シェアリングエコノミーを活性化させるため、規制を画期的に緩和する」と言及。これまで違法となっていた「民泊ビジネス」の規制を、大幅に緩和する方針を示した。規制緩和の骨組みとしては、宿泊業の許可を得ていない一般人でも、230平方メートル以下の面積に限り、最大で年間120日間、外国人や国内の人々に家を貸すことができるようになるというもの。これらの方針を受け、釜山広域市、江原道、済州特別自治道などの地域でまず、民泊ビジネスが実質上の解禁となる。
ただし、政府がこのような方針を出す以前から、すでにグレーな民泊は増加傾向にあった。韓国のリゾート地として知られる済州島では、2013年に1449件だった民泊が14年には1925件、15年には2363件まで増加している。今回の政府の対応は、そのような急増する民泊ビジネスを追認したというのが、正確なところかもしれない。
ところで、そもそも異国暮らしをする移民が多い韓国人の中には、民泊ビジネスが注目を集める以前から海外で自国民用の民泊を運営する人々も少なくなかった。そんな、いわゆる「韓人民泊」では、このところトラブルが頻発しているという。
たとえば、イタリア旅行に行った女子大生Aさんが、現地で韓人民泊を利用しようとしたところ、民泊の主人にセクハラをされたという。民泊の主人は宿泊客と共に酒を飲み、酔っ払ったAさんの体をまさぐり始めたという。
「わたしが酔っ払うと、民泊の主人がキスをしてきて、その後、体を触ってきました」(Aさん)
この民泊の主人は、Aさんが憤慨して「警察に通報する」と言ったところ、「ほかの善良な韓人民泊運営者が風評被害を受けるから取りやめてくれ」と懇願してきたという。冗談としか思えないやりとりである。
そのほかにも、韓人民泊を利用した宿泊客からは、宿泊キャンセル時に料金が返却されない、料金だけ取られ逃げられてしまうなどの被害も報告されている。また、写真と実際の部屋がまったく異なっていたり、ホームページに掲載された住所ではない地域に部屋があるといったトラブルは日常茶飯事だという。ちなみに、韓人民泊は各国で許可を得ていない場合が大半なので、被害者が警察に相談してもほとんど意味がないと指摘されている。
各国で盛り上がりを見せている民泊ブームだが、規制が整い始めることで韓人民泊のような“違法業者”の撲滅にもつながるのか、注視していきたい。
(取材・文=河 鐘基)