日本銀行の金融緩和に関して、次第に選択肢が狭まっている。
7月28、29日に開催された日銀金融政策決定会合の結果、追加緩和として上場投信(ETF)の買い入れ増額とドル資金供給の拡充が発表された。この内容は市場の期待を下回り、その後の円高、金利上昇につながった。また、国債買い入れの増額が見送られたことに対して、日銀の限界を示したとの見方も多かった。決定会合後の声明文で、日銀は9月の会合で経済状況や政策の効果を包括的に検証すると表明した。多くの市場参加者は、この検証がマイナス金利の凍結など金融政策の修正につながるとみているようだ。
つまり、市場は金融政策が限界を迎え、その修正が進むと考え始めている。日銀の積極的な金融緩和にもかかわらず、日本経済のデフレからの脱却は進んでいない。これは、日銀の積極的な金融緩和で景気回復を目指した、“金融政策一本足打法”のアベノミクスの限界を露呈しているともいえる。それは日銀も認識しているだろう。金融業界からのマイナス金利に対する批判も強い。
しかし、金融政策の修正は口で言うほど簡単ではない。日銀を批判しつつも、多くの投資家は日銀の金融緩和を頼りに、収益チャンスを狙ってきた。その状況に変化が生じるなら、金利が急上昇するなど、市場は混乱に陥る恐れがある。
一方、依然として、黒田東彦日銀総裁は「追加緩和に限界なし」と強弁を貫いている。この事実を踏まえると、市場参加者が期待する金融政策の修正が本当に実現するかどうか、慎重に考えたほうがよい。
期待を裏切る追加緩和が決定された理由
7月の日銀決定会合を控えるなか、多くの投資家やエコノミストは、日銀が国債買い入れの増額、マイナス金利の深掘り、そしてETFや不動産投資信託(REIT)の買い入れ増額を決定すると期待していた。マイナス金利に対する批判を和らげるために、日銀が銀行にお金を貸し出す際の金利にマイナス金利を適用し、銀行の資金繰りを支援する措置なども決定されるのではないかとの見方もあったようだ。
こうした“3次元緩和”への期待に対して、ETFの買い入れ倍増を中心とする日銀の追加緩和は、事実上“1次元”の追加緩和だったといえる。そのため、発表後の国債市場では金利が急上昇(国債価格は下落)して円高が進むなど、“失望トレード”が進んだ。