世界中で大人気となり、日本でも社会現象となったスマートフォンゲーム「ポケモンGO」。配信から1カ月が過ぎ、最近では「飽きた」という人も増えてきたが、時折ゲームがアップデートされるなど、さらに面白みや奥深さは増している。そのため、「従業員がポケモンGOに熱中しすぎて、仕事中もプレイしている」といった、経営者の悩みをよく耳にする。
そんななか、興味深いケースが出てきた。
東京都内のIT企業、日本ビジネスシステムズ(JBS)の法務部で社内弁護士として働いている従業員が、副社長からポケモンGOを業務としてプレイするように命令されたというのだ。会社の懇親会で、「登場するポケモンを全部捕まえてコンプリートしたら話題となって、会社の業績貢献にもつながるのではないか」という意見を耳にした副社長が、従業員に対してコンプリートするように業務命令を出した。この奇抜な業務命令は、ヤフートピックスにも取り上げられ、大きな反響を呼んだ。
なんとも突飛な業務命令だが、そもそも従業員にポケモンGOをプレイするよう命じることは認められるのか。労働問題に詳しい浅野英之弁護士は次のように話す。
「会社には、従業員に対して業務命令を行う権利が認められて、その命令の根拠は、使用者と従業員が結ぶ労働契約にあります。そして、労働契約を締結すると、労働者側は会社に対して『労働をする』という義務を負い、会社側は労働者に対して『賃金を支払う』という義務を負うため、労働契約を締結した時点で、労働者は会社から業務命令を受けることを当然の前提としているのです」
しかし、どんな業務命令でも認められるわけではない。本来の業務とはまったく関係のない行為については、業務上の必要性がないとして業務命令と認められない場合もある。
「今回の件では、ポケモンGOをプレイするという行為が、会社にとって業務上の必要性が認められるかを検討する必要があります。そのうえで必要性が認められなければ、業務命令を出すことはできません。また、必要性が認められたとしても、ポケモンGOをプレイすることが労働者にとって過度の負担になるのであれば、業務命令は不当といえます」(浅野弁護士)
本来の業務に追加であれば「過剰労働」か
また、業務命令が出され、命令を受けた従業員がポケモンを集めるためには、社外を動き回らなければならず、外勤と同様の働き方となる。全国のあらゆる場所に出現するため、コンプリートを目指すのであれば、効率的に移動していかなければならない。