この場合、会社は従業員が社外でポケモンGOをプレイしている時間に関し、どのように労働時間の管理をすればよいのだろうか。
「会社が従業員の労働時間の把握が困難な場合には、事業場外みなし労働時間制を採用することが考えられます。ただし、事業場外みなし労働時間制を採用するためには、労働時間の把握が困難な状態が前提となります。そのため、ポケモン捕獲のために動き回っていても、会社がポケモンの出現地をマップで指示して順番に回らせたり、ポケモンを捕獲するたびに会社にメール報告するように指示していれば労働時間を把握できますので、事業場外みなし労働制を採用することができない可能性が高いといえます」(同)
また、プレイ時間について、事業場外みなし労働時間制を導入する条件を満たしていたとしても、まったく従業員の労働時間を把握しなくてよいわけではない。少なくとも、ポケモンGOによって長時間労働を強要していると評価されないように十分に気を配る必要がある。
「ポケモンGOはゲームであって、遊んでいるわけだから負担は少ないはず」と考え、本来の業務終了後に追加業務としてプレイさせるとすれば、かなりの過剰労働となる可能性は十分にある。
また、「ゲームをさせているだけだから、残業代は発生しない」などと考える経営者もいるかもしれないが、これも間違いだ。会社の指揮命令の下で業務を行わせている以上は、残業代の支払い義務が生じるのはもちろん、その業務中に事故にあったり、過剰労働によって精神を病んだりした場合には、会社の責任が問われることにもなりかねない。
会社は業務命令を出すことにより、一定の範囲で従業員を自由に使って運営できるが、他方で会社には従業員を守る義務もある。この均衡が崩れてしまうと「ブラック労働」になってしまう。経営者には、このバランス感覚を意識して会社を経営してもらいたい。
(文= Legal Edition)
【取材協力】
浅野英之(あさの・ひでゆき)弁護士
浅野総合法律事務所 代表弁護士
労働問題・人事労務を専門的に扱う法律事務所での勤務を経て、四谷にて現在の浅野総合法律事務所(東京都新宿区)を設立、代表弁護士として活躍中。労働問題を中心に多数の企業の顧問を務めるほか、離婚・交通事故・刑事事件といった個人のお客様のお悩み解決も得意とする。労働事件は、労働者・使用者問わず、労働審判・団体交渉等の解決実績を豊富に有する。