5年に1度行われる国を挙げた統計調査「国勢調査」が始まっている。生活環境の改善や防災計画など、行政の基礎となる人口・世帯の実体を明らかにするもので、今年は大正9年の第1回調査からちょうど100年の節目を迎える。対象は「日本に住んでいるすべての人・世帯」で、統計法にもとづき、調査項目に対する回答は義務になっている。新型コロナウイルス感染症の拡大を防ぐ観点から、総務省は極力人手を経ないようにするために調査員への書面提出や郵送ではなく、インターネットでの回答を強く推奨している。そんな中、このネット調査に関して16日夜、Twitter上で驚きの投稿がなされ物議を呼んでいる。
ログインIDのアルファベットの並びが4文字スラングに
その投稿は以下のようなものだった。
私はセクハラされました pic.twitter.com/qGJPlLdtVz
— まろ (@plmoknKz) September 16, 2020
「総務省から誹謗中傷を受けました」(原文ママ、以下同)
「私はセクハラされました」
投稿者が掲載した写真の「ログインID」の部分に、アルファベットで「エフ・ユー・シー・ケー」などと記載されていることがわかる。いずれも続けて読むと英語の卑猥なスラングになってしまっている。
総務省「意図したものではありません」
国勢調査のインターネット回答では、国勢調査オンラインにアクセスし、調査員から各世帯に手渡されていた利用ガイド記載の4文字のアルファベットと4桁の数字で構成されるIDと、4桁のアクセスキーを入力してログインする。こうしたログインIDは民間企業の様々なウェブサービスで活用されているが、ここまであからさまにIDの文字列が何かの言葉を指している事例は珍しい。
総務省統計局統計調査部国勢統計課の担当者は次のように話す。
「アルファベット4文字がランダムに並ぶ仕様になっていまして、何らかの言葉になるように意図したわけではございません」
金融機関の基幹システムの構築などを担当している大手メーカー勤務のシステムエンジニアは次のように語る。
「一般的に、セキュリティーの強度の観点や、組み合わせが多様になることもあり、ユーザーアクセス用の初期IDやアクセスキーはアルファベットと数字をランダムに組み合わせて配布します。
そのためどのようなIDになるかまで、我々は関知しません。乱数に従って割り振るのみです。ただ、アルファベットの配置がそれなりに意味を持ってしまう欧米などでは、こうした事例が起こっていけないので、アルファベットと数字を混在させるのが一般的です。そのほうがセキュリティー面の強度も上がりますしね。
今回の国勢調査のIDはアルファベット部分4文字と、数字部分を分割していたために起こったと言えます。4文字で意味を成す言葉は他にもいろいろあります。こういう事故が起こると、最近はSNSでネタとして拡散してしまいますし、そういうことにも気を使って設計した方がいいと思います」
物議を醸したものの、国勢調査自体への関心が高まったことは悪いことではないだろう。調査へのインターネットでの回答期間は今月14~10月7日だ。良い機会だから一度、自分の手もとにあるログインIDがどうなっているのか確かめてみてもいいかもしれない。
(文=編集部)