インバウンド(訪日外国人客)の増加が止まらない。日本政府観光局公表のデータによると、4月は前年同月比23.9%増の257万8900人で、単月として初めて250万人を突破し、過去最高を記録した。5月13日時点で1000万人を超えたことも明らかにした。1000万人突破は、これまでもっとも早かった昨年より23日も早い。
環境省の「国立公園満喫プロジェクト」には、増え続ける外国人たちを国立公園エリアに誘導して地域活性化につなげようという思惑が見える。
この事業は2020年のインバウンド4000万人を目標としている政府の「明日の日本を支える観光ビジョン」の施策のひとつで、20年までに国立公園のインバウンド利用者数1000万人を目指すもの。先導的モデルとして選定した8つの国立公園に地域協議会を設置し、ステップアッププログラムなどの策定に取り組んでいる。モデルとして選ばれた国立公園は次のとおり。
・阿寒国立公園
・十和田八幡平国立公園
・日光国立公園
・伊勢志摩国立公園
・大山隠岐国立公園
・阿蘇くじゅう国立公園
・霧島錦江湾国立公園
・慶良間諸島国立公園
ようやく当たり前のことに着手
プロジェクトではこれまでに5回の有識者会議を開催し、観光の専門家らからアドバイスを受けながら取り組みを進めている。昨年9月には各公園に地域協議会を設置し、12月には各地域協議会で「ステップアッププログラム2020」を策定した。
また、今年5月12日に都内で開かれた5回目の有識者会議では、現在の取り組み状況が報告された。具体例として、以下のような事例が挙げられた。
・地方自治体、他省庁との連携
・ファムトリップ(誘客促進のための現地視察ツアー)の実施
・「全国温泉地サミット」の開催
・廃屋撤去、「山の駅」の整備
・観光地間を結ぶバスの試験運行
・成田空港や全日本空輸(ANA)、日本航空(JAL)の機内で8公園のプロモーションビデオを放映
・オフィシャルパートナー(31社)との連携
さらには、公共施設の民間開放として、展望台に民間のカフェを導入した例も紹介された。
これまでのところ、アッと驚くような画期的な取り組みは見当たらないが、興味深い例はいくつかあった。それは、「引き算の景観改善」として紹介されたもので、阿寒や日光における廃屋撤去や、十和田八幡平の登山口の標識・看板の整理統合、日光の電線地中化などだ。地元自治体と連携し、大きな予算をかけずに景観を整備・改善するという、当たり前だが欠かせない施策である。