首都圏ではコロナの感染拡大を受けて、緊急事態宣言が発令された。そうした状況下では、山口組の分裂問題もしばし膠着状態に入ることが予想される。ただ六代目山口組の幹部たちは、その直前まで、ヤクザ社会では“義理ごと”と呼ばれる重要行事に参列していたようだ。
その義理ごととは、2019年10月10日、神戸市内の五代目山健組本部事務所付近で、2人の山健組組員が六代目山口組三代目弘道会系組織の幹部に射殺される事件が起きたのだが、裁判中であった幹部が病のため、拘禁先の拘置所で昨年の12月31日に獄死していることがわかり、その通夜が1月2日にしめやかに執り行われたのだ。
そして、この通夜に六代目山口組・髙山清司若頭を始めとした直系組長らが参列したのである。
「亡くなった三次団体幹部はそもそも持病があったようだ。逮捕後、一時容態がよくなってきているのではないかという噂もあったが、再び持病が悪化し、拘置所で亡くなったようだ。それにしても三次団体幹部の通夜に、本家の若頭らや直参と呼ばれる親分衆らが参列したことを見ても、この幹部は、分裂抗争に身体をかけた功労者として、組織内では強く敬われていたのだろう」(業界関係者)
また、六代目山口組では例年1月1日の午前0時過ぎに、神戸市灘区にある山口組総本部近くの護国神社へと参拝するのが恒例となっているのだが、今年は2人の直系親分衆が初詣へと訪れたことが捜査関係者に確認されている。
「分裂以前までは、護国神社の初詣に六代目山口組・司忍組長と執行部の親分衆が参拝し、そこから総本部に戻って、直系の親分衆らと新年の挨拶を交わすのが恒例でした。しかし現在は、総本部の使用を禁じられており、神戸市が警戒区域に指定されていることから、5人以上の組員が集まることを禁じられています。そうした中でも六代目山口組では、公式行事を取りやめることなく、開催場所を変えたり、必要最低限の人数で行ったりなどの工夫をしながら続けています。どれだけ法規制をかけられても、根本を変えることなく公式行事は行う。これが、六代目山口組の強さの表れといえるのではないでしょうか」(ヤクザ事情に詳しいジャーナリスト)
確かに、六代目山口組から分裂した神戸山口組などは、当局による規制強化後、会合などの開催地を秘密裡にし、必ずしも組事務所ではなく、飲食店を使うなどの対策を講じている。しかし六代目山口組では、規制を受けない警戒区域外の二次団体事務所を公式行事の開催地とし、かつ一個所に集中させない分散型の運営を行っている。
例えば、友好団体への訪問という重要行事の拠点には、複数の二次団体本部を使い、また年末の会合では某二次団体の本部を使用したかと思えば、年末の餅つきは、地域の異なる二次団体本部で行っている。これは、活動の拠点となる組織が全国各地に根付いていることを示すと同時に、公式行事の開催場所を明確に定めないようにしていることを意味するではないだろうか。
「拠点を一個所に集中させると、いつそこが警戒区域に指定されるかわからない。それを防ぐためにも、分散して行事を行っているのではないか。それだけの体力や組織規模が六代目山口組にはあるということ。そこが他の組織との違いなのだろう」(某組織幹部)
第3波といわれるコロナ禍が激しさを増し、東京オリンピックも現状どうなるのかわからない状態だ。経済も停滞し、混迷極める社会情勢を考慮すると、山口組の分裂問題に関係した動きも鈍くなり、解消までにはまだ時間を要する可能性が高い。だが、そうした状況にあっても、六代目山口組は変わることなく2021年の新しいスタートを切っている。
(文=山口組問題特別取材班)