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「限界国家」日本、大量の外国人実習生が失踪…外国人労働者抜きでは社会維持が困難に

構成=長井雄一朗/ライター
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「限界国家」日本、大量の外国人実習生が失踪…外国人労働者抜きでは社会維持が困難にの画像1日本国際交流センター執行理事の毛受敏浩氏

 少子高齢化に伴う未曾有の人口減少が、日本に襲いかかっている。言うまでもなく、人口減少は企業の人手不足、地方の衰退、移民の受け入れなどと密接不可分であり、国家の存亡にかかわる問題だ。

 そんななか、6月に刊行された『限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択』(朝日新聞出版)が話題を集めている。著者は、日本国際交流センター執行理事の毛受敏浩(めんじゅ・としひろ)氏だ。

 毛受氏は、移民について「単なる労働力と見るのではなく、さまざまなかたちで日本に貢献する可能性を秘めた人材であると同時に、日本を新たなステージに運ぶカギである」と語る。しかしながら、日本人には“移民アレルギー”を持つ人も多く、議論はなかなか進まないというのも事実だ。

 避けて通れない現実として人口減少が立ちはだかる日本は、どんな道を進めばいいのか。毛受氏に聞いた。

タブー視され、語られない移民受け入れ論

――まず、『限界国家』を上梓した思いからお聞かせください。

毛受敏浩氏(以下、毛受) 2011年に上梓した『人口激減―移民は日本に必要である』(新潮社)では、移民受け入れの必要性を訴えました。『限界国家』は、その続編にあたります。

 現実的に考えて、人口減少は今後さらに進みます。日本の国際的地位が低下するなかで何も手を打たなければ、20年代には現状より620万人が減少すると予想されています。

 本来、移民については国会議員や学者の方々の間で議論されるべき問題だと思いますが、ある意味でタブー視されています。そこで、あえて草の根から、私が第2の提言をしたというわけです。<

――前著の『人口激減』では、東北のある地方都市をモデルに、移民を受け入れなかったケースをリアルに描いています。そして、その通りに時代は進み、地方の衰退は止まりません。

毛受 まさに私自身も驚くほど、悲惨なシナリオに沿った通りに物事が進んでいます。地方自治体の方と意見交換を行う機会が多いのですが、ある市役所職員からは「地方創生も町おこしも、やれることはすべてやったにもかかわらず、毎年1000人ずつ減少している」「ここまで来たら、移民を受け入れるしかない」と聞いたことがあります。

 地方自治体が移民を受け入れるとすれば、トップダウンで首長が決断するしかないと考えています。私は兵庫県庁で10年間勤務した経験がありますが、地方自治体が国の顔色をうかがうという事情をよく知っています。国に先駆けて自治体が外国人の受け入れを積極的に行うのは難しいことですが、このままでは衰退は必至です。地方自治体には、勇気を出して「定住外国人の受け入れが必要だ」と言ってほしいです。

 高度経済成長期に公害問題が発生した際、地方自治体が公害防止条例を国に先駆けて策定、それを受けて国が立法化しました。地方自治体も、トップの決断で「移民受け入れ宣言」「移民受け入れ条例」「移民特区」などを提案するときに来ているのだと思います。

 これまで地方自治体が行っている多文化共生は、移民受け入れ問題とは別の次元で考えられてきましたが、今は「共に考えなければならない」という意見が広がりつつあります。

世界から異様な目で見られる、日本人の「終活」

――国は「コンパクトシティ」政策で乗り切ろうという思惑のようです。

毛受 このまま人口減少が進めば、地方自治体の半分は消滅します。町がコンパクトになって、さらに人口が減れば、もう一段コンパクトにする。その繰り返しになり、集住地域から外れた地域は見捨てられることになるでしょう。私から言わせれば、「負け戦」前提の戦略です。

――このまま移民を受け入れなければ、どのようなことが起きますか。

毛受 2016年度の「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数」(世界各国の年金制度の比較)では、日本の評価は27カ国中26位。インドや中国よりも下のランクです。すでに厳しい状況ですが、日本は働く現役世代に依存する賦課方式をとっていますが、その人口が減少する以上、年金のさらなる悪化が想定されます。

 今、秋田県など特に衰退が激しい地域では、至るところで廃墟が生まれています。それに伴い、日本の伝統的な文化、行事、民俗などが消滅している現実があり、その進行度は加速しています。このままいけば、地域社会は取り返しのつかないほど衰退することになるでしょう。

 日本の文化というのは、京都府や奈良県、東京都だけにあるものではありません。山をひとつ越えれば祭りの方法も異なる。そんな多様性が日本文化の真髄です。しかし、その多様性が失われつつあります。

 また、高齢化が著しい農業人口はすでに200万人を割っています。高齢者に頼っている建設業界も「10年間で110万人が離職する」との予測がありますが、若い人が入職しない産業は衰退していき、インフラ整備、介護、モノづくりなどがままならなくなるでしょう。人口減少と高齢化によって、我々が当たり前に享受してきたサービスが崩壊することになるのです。

 そうなれば、日本の若者が海外に流出する恐れもあります。高齢者ばかりになった日本にとどまるよりも、英語を勉強してオーストラリアやカナダに定住する可能性もあるでしょう。そして、日本は若者から見捨てられた国家として衰退する。そんな未来も十分にあり得るのです。

 そもそも日本でブームになっている「終活」も、世界的では異様な目で見られているという現実を知ってほしいです。

日本人に根強い「移民アレルギー」の正体

――日本が移民を受け入れないことについて、海外からはどのような反応がありますか。

毛受 「異様である」との反応もありますが、「このまま日本が没落しては困る」という反応が大きいです。移民国家であるオーストラリアの大使館の方は、「我々はいつでも移民受け入れのノウハウを提供する。しっかり協力する用意がある」と言っていました。海外からは、「日本は国家が衰退する前に移民を受け入れるべき」との声が多いです。

――安倍晋三政権は、基本的には移民を受け入れない方針です。移民に対して、日本人のアレルギー反応が強いのはなぜでしょうか。人口動態を見れば、移民受け入れは必然のようにも思えますが。

毛受 まずは、人口減少について深刻に考えていないのでしょう。東京大学や慶應義塾大学で移民問題について講義をした際、始める前は移民受け入れについて「賛成半分、反対半分」でした。

 しかし、日本が今置かれている状況や人口問題について講義した後、再度聞いたところ全員が賛成に回りました。要は、移民問題について十分な知識がない学生がほとんどだということです。不十分な知識しか持たずに、印象的に「反対」と言っている人が多いのです。

 もうひとつは、インターネット上の一部で「移民を受け入れると、人口の多い中国人などに町が乗っ取られる」といった考えが拡散したこともあると思います。

 さらには「職が奪われる」という意見があります。しかし、すでに高度人材のホワイトカラーの受け入れを行っていますが、日本はそれほど人気がありません。ブルーカラーについても、これから人手が足りなくなるなかで職が奪われるということはないでしょう。逆に、移民が会社や仕事をつくって日本人を雇用するというケースもあり得るのです。

 一般に移民は起業意欲が高く、アメリカではヤフー、グーグル、アマゾンなどは移民によって起業されており、日本でもソフトバンクグループの孫正義会長兼社長がその例です。また、私は移民について「無制限に受け入れるべき」と主張しているわけではありません。しっかりとしたルールに則って段階的に親日国から移民受け入れを行うべきだと考えています。

――「社会が発展できるモデル」の構築を目指す「未来を創る財団」では、会長の國松孝次氏(元警察庁長官)らと共に、定住外国人受け入れを検討する委員会創設を提言していますね。

毛受 現在、外国からの留学生や技能実習生を受け入れていますが、不法滞在者や技能実習生の失踪が急増しており、高止まり状態です。ルールなき移民受け入れであれば、闇社会と結託して日本の治安が脅かされることにもつながります。國松会長が「定住外国人受け入れのルールを決めよう」と語るのは、治安を守る警察OBとしてはきわめて自然なことです。

移民受け入れ政策、3つのルールとは

――移民を受け入れるに当たっての具体的な内容を教えてください。

毛受 「入国割当政策」「ソフトランディング政策」「多文化パワー政策」が3つの柱です。

 まず「入国割当政策」は、東南アジアの親日国を中心に25万の外国人を受け入れるというものです。ベトナムやフィリピンなどと2国間条約を締結して、受け入れ人数を決めます。そして、希望する外国人が申請を行い、学歴、職歴、年齢、日本語能力などの受け入れ基準を明確化します。これは、数万人からスタートして徐々に増やすべきです。

「ソフトランディング政策」は、日本語や日本文化の教育の実施、地方自治体で実施している防災、教育、福祉、医療サービスなどを説明することです。

 日本人と外国人は同じ地域に住んでいてもまったく交流がないというのが問題で、お互いにコミュニケーションを取ることが大切です。日本人との間に賃金の格差があれば不満も出てくるため、そうした事情を訴える場も必要です。

 新宿区では、中国人が犯罪を行ったものの、中国では犯罪事案に該当しないため当の本人も犯罪を行った自覚がないというケースがありました。このようなことがないように、NPO(非営利団体)や行政が日本の国情を説明することが大切です。群馬大学では多文化共生推進士を養成していますが、このような動きが広まることを願っています。

 3番目の「多文化パワー政策」は、日本人と外国人がウィンウィンになるような環境整備、たとえば、移民の持つバイタリティと日本人の持つ経験や知恵をミックスすることによる起業ができるような政策が必要ということです。

 このなかで私が重点を置きたいのが、日本語教育です。今、超党派の国会議員から構成する日本語教育推進議員連盟が「日本語教育振興基本法(仮称)」を議員立法で制定する動きがありますが、期待しています。

 最後に、移民を受け入れなければ移民問題が起こらないというのは間違いということを強調したいと思います。人口減少、人手不足の深刻化の状況が続く以上、日本にとって望ましい外国人の受け入れ方をしっかり考えないと、意図せざる外国人の定住化が進み、ヨーロッパで起こったような深刻な移民問題が近い将来、発生するようになるということです。

――ありがとうございました。
(構成=長井雄一朗/ライター)

長井雄一朗/ライター

長井雄一朗/ライター

建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス関係で執筆中。

Twitter:@asianotabito

『限界国家 人口減少で日本が迫られる最終選択』 すでに介護・農漁業・工業分野は人手不足に陥っている。やがて4000万人が減って地方は消滅をむかえ、若者はいい仕事を探して海外移民を目指す時代となるだろう。すでに遅いと言われるが、ドイツ、カナダなどをヒントに丁寧な移民受け入れ政策をとれば、まだなんとか間に合う。 amazon_associate_logo.jpg

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