江川紹子の「事件ウオッチ」第86回
【記者会見の質問で安倍官邸が東京新聞に抗議】マスコミは的外れな言いがかりになぜ反論しないのか
文=江川紹子/ジャーナリスト
今年2月、批判的メディアを敵視している米トランプ政権で、ホワイトハウスの報道官が、定例記者会見を中止し、政権側が指名した報道機関だけが参加できる記者懇談に切り替えて、CNNやニューヨーク・タイムズなどを排除したことがあった。この時には、出席を許されたメディアのいくつかが、抗議のために出席を拒否。さらに記者会としても抗議をしている。
トランプ大統領が就任直前に開いた記者会見で、自身に批判的なCNNなどのメディアについて、「嘘ニュース」などと激しく非難し、同社記者の質問には一切応えなかった際にも、CNNのライバル局であり保守的なFOXニュースのキャスターが番組内でCNNを擁護し、「どんなジャーナリストも、米国の次期大統領による誹謗中傷に屈してはなりません」と言い切った。
政権による不当な圧力には、きちんと声を挙げて抗議をする。ターゲットになったのが、自分とは政治的立場や論調が違うメディアやジャーナリストであっても、それを応援する。日本でも、とりわけ報道機関にはそうあってほしい。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)