他人を巻き込み「拡大自殺」する高齢者が増加…サンバカーニバルに火炎瓶投げ込み、新幹線内で焼身
37歳の男が散弾銃を発砲し、このスポーツクラブに勤務していた水泳インストラクターの26歳の女性と自分の中学・高校の同級生の男性を殺害した。さらに、6人に重軽傷を負わせた後、この男は裏口から逃走した。翌日、数キロ先の教会の敷地内で死亡している姿が発見された。警察は自殺と判断した。
事件後、関係者の証言から、この男が殺害したインストラクターの女性に一方的に好意を寄せていた形跡のあることが判明した。「(殺害された女性インストラクターが)別の男性と歩いているところに(容疑者が)不意に現れるなど、ストーカーまがいの行動をしていた」という報道もある。
さらに、犯行現場にいた他の人たちには目もくれず、女性インストラクターを狙撃しているため、警察はこの女性を計画的に狙った犯行と断定した。したがって、容疑者が被害者に対して一方的な好意を抱いたあげく、彼女を道連れにして無理心中を図ろうと犯行に及んだ可能性が高い。
無理心中を図ろうとしたのは、容疑者が追い詰められていたからだろう。彼は工業高校を卒業してから、名古屋と東京で職を転々としていた。その後、佐世保に戻って水産会社や病院などで働いたが、いずれも長続きしなかったようだ。仕事のやり方で注意されて激高し、短期間で退職したこともあったらしい。また、弁護士をめざして司法試験を受けていたが、4年連続で不合格になっている。さらに、借金して浪費を続けていたが、返済の目処は立っていなかった。
こうした軌跡を振り返ると、何もかも行き詰まっていた容疑者が、絶望して自殺願望を抱き、片思いの相手を巻き込んだ拡大自殺によって人生に終止符を打つ決断をしたと考えられる。
高齢者の拡大自殺
最近目立つのは、赤の他人を道連れにして高齢者が拡大自殺を図る事件である。
たとえば、15年6月30日、走行中の東海道新幹線の先頭車両で70代の男がガソリンをかぶって、焼身自殺を遂げ、逃げ遅れた女性1人が死亡し、28人が重軽傷を負う大惨事になった。この事件は、自分が自殺を図ることによって、他の乗客が巻き添えで死んでもかまわないという未必の故意があったという点で、典型的な拡大自殺といえる。