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安芸高田市議会が“麻痺”…副市長をエン・ジャパンで公募→議会が否決、税金をドブに捨て

文=編集部
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安芸高田市公式サイトより

 公職選挙法違反の罪に問われた元法相の河井克行氏(57)から現金を受け取ったとして前市長が辞職した広島県安芸高田市。その辞職した市長の後任として初当選した石丸伸二市長(38)と市議会の間に不穏な空気が漂い続けている。市議会は10日、一般社団法人RCF職員の四登夏希氏(34)を副市長に充てる専任同意案を7対8の賛成少数で否決。石丸市長と議会の溝の深さを改めて露呈したのだ。

エン・ジャパンで副市長を公募も否決

 今回否決された「2人目の副市長」の民間採用案は石丸市長肝いりのアイデアだった。まず、人材サービス大手のエン・ジャパンで応募を受け付ける異例の手法を採用したことが注目を集めた。1月4~31日の間、4115人から応募があり40人が書類選考を通過。市職員によるオンライン面接を経て、石丸市長と米村公男副市長が最終選考に残った13人をオンライン面接し、四登氏を内定していたのだ。

 石丸市長は自身の公式Twitterアカウントで1月6日、「『なぜ他社ではなくエン・ジャパンなのか』というと、実績に裏打ちされたノウハウの蓄積が決め手です。大手の転職エージェントに色々と相談に乗って頂き、慎重に比較検討した上で、#エン・ジャパン株式会社のサービスを利用しようと決めました」などと投稿していたのだが、市議会は市長のネットを多用した「スタンドプレー」に難色を示していた。採決に先立つ一般質問でも双方の対立は以下のように先鋭化していた。

「石丸市長は開会中の市議会定例会の一般質問に先立ち、『どう喝』問題について自身と対話の場を持つ意思を示した市議に対してのみ一般質問で答弁すると発言。3月4日の一般質問では『後ほど文書で回答する』などと繰り返し答弁した。『答弁内容が不十分』と市議の反発を招き、議長が一般質問を打ち切る事態もあった」(3月10日付中国新聞インターネット版『公募の34歳副市長 賛成少数で否決 安芸高田市議会』より

 上記の記事は実名表記ではないため、対立の構図が見えにくくなってしまっているが、石丸市長が『後ほど文書で回答する』などと“不十分な答弁”をした相手こそ、一連の混乱の発端となった武岡隆文市議だったのだ。

“居眠り”?ツイート→“恫喝”?問題発生→市長がTwitterで暴露

 中国新聞の一連の報道などによると、すべての発端は昨年の9月定例会で、石丸市長が、前出の武岡市議が“議会中に居眠りをしていた”と取れる発言やツイートしたことにあるようだ。

 石丸氏は昨年9月25日午前10時開会の一般質問1人目の市議への答弁で、武岡市議がいびきをかいて寝ているように見えたためか、「まず眠たくならないような答弁にしないといけないなと、今改めておのれを奮い立たせているところであります」などと発言した(議事録・安芸高田市議会9月定例会16日目110ページ、下から7行目)。さらに同日、自身のTwitterアカウントで「大舞台でパフォーマンスが示せないのは、プロとしてどうなんだろう」と投稿した。一連の発言と投稿は全国紙や在京キー局も取り上げ、インターネットを中心に物議を醸した。

 一方、武岡市議は報道各社の取材に対し「脳梗塞で意識を喪失していた」などと反論。同僚の市議らも石丸市長の発言や投稿を問題視し、市議会全員協議会(全協)で説明を求めた。

 ところがこの全協での市長への追及が違う形で注目されることになる。石丸市長は10月1日、この全協に関し「敵に回すなら政策に反対するぞ、と説得?恫喝(どうかつ)?あり」と投稿したのだ。これが、現在までに至るまで禍根を残す“恫喝”問題となった。

 その後、同市議会の正副議長が市議全員に聞き取り調査を行い「威圧的と感じる発言はなかった」と結論づけたのだが、そうした動きに石丸市長は再反発。このころまで、市長に反発する武岡市議や同僚市議らの氏名は明確にされていなかった。石丸市長はその後、武岡市議らの実名を記したうえで、同市議らから受け取ったメッセージを以下のようにTwitterで暴露したのだった。

 その後の経緯を全国紙デスクは次のように解説する。

「さすがにこのままではまずいということなのか、石丸市長は“恫喝”問題で対立した市議らに対し、『対話の場』を設けることを提案したのですが、一部市議らが拒否しました。そのため石丸市長は今月4日の一般質問で『対話に同意した市議』の質問にだけ回答し、武岡市議ら一部の市議に対して『後ほど文書で回答する』という態度を取ったようです」

一番の被害者は誰なのか

 この状況下で副市長の選任同意案は可決する見込みがあったのだろうか。また一連の対立で一番の被害者とは誰なのだろうか。今回の副市長選任同意案否決と一連の騒動に関し大手人材派遣会社幹部は語る。

「そもそも可決の成算がなければ公金をドブに捨てるようなものではないかと思うのですが、どうなのでしょう。まずは住民の皆さんが被害者でしょうね。いくらぐらいの契約なのか定かではありませんが、内定を出した後でこのような結果になったのですから、採用側都合のキャンセルとなるでしょう。当初の予定通りエン・ジャパンさんは費用を請求すると思います。費用だけでなく、一連の選考には市役所職員の労力や時間も相当かかったていると思います。

 後は内定していた四登氏が気の毒ですね。RCFさんは官民連携事業の調整を担う団体として全国的に知られています。同団体の職員の皆さんは各地の自治体の内情に精通するプロフェッショナルですが、ここまで混沌とした事態は前代未聞でしょう。職場は栄転という形で四登氏を送り出すことになっていたのでしょうが、これでは……」

 地方利権や前例踏襲の横行で地方議会の存在意義が社会に問われて久しい。そのあり方に一石を投じる必要はあるのだろうが、果たしてこの対立の先に住民の幸福はあるのだろうか。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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