安倍政権は数々の悪法を成立させ施行しているが、とりわけ6月15日成立・7月11日施行の「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」(通称:共謀罪)は、最悪の法律といっていいだろう。
これまでは、殺人・殺人未遂など一部を除き、犯罪行為を実行したり、社会や人に被害を与えなければ処罰されなかった。ところが、共謀罪は計画段階で処罰を可能にするもので、犯罪を実行せず被害が発生していなくても(被害者がいなくても)処罰が可能になる。近代刑法の大原則を根底から覆すもので、捜査当局が「計画があった」と“勝手に”判断すれば捜査できる。
つまり、捜査当局(主に警察)が気に入らない組織や人を、いつでも処罰できるのだから、権力者に“全権委任”するようなものだ。
この状況に対し、共謀罪違憲訴訟を提起したらいいと考える人もいるようだが、2018年には「国会法56条の3」違反を追及する訴訟が起きる可能性がある。
モリ・カケ問題からの逃亡と共謀罪強行成立
17年6月14日から15日朝にかけて、参議院は共謀罪法案審議の大詰めを迎えていた。
誰でもいつでも罪に陥れられる共謀罪には反対する声が強く、野党も抵抗していた。会期切れ目前であり、もし会期延長となれば、「森友学園・加計学園疑惑」の追及に政府や安倍晋三首相が耐え切れないのは明らかだった。
そこで、政府・与党としては、なんとしても会期内に共謀罪を強行成立させ、同時に国会を閉じて野党によるモリ・カケ問題の追及を逃れるようにした。そして、憲法53条に基づく野党からの臨時国会の召集も拒否し続け、ようやく召集したかと思えば冒頭に解散、10月22日の総選挙を実施して自民・公明の与党が3分の2の議席を獲得したのは周知のとおりだ。安倍政権の計画どおりに事が進んでいるようである。
だが、このまま安倍政権の暴走を放置していいはずがなく、ひとつの手法として浮上してきたのが「国会法56条の3違反」で共謀罪の違法性を追及する訴訟の提起である。
提案しているのは、足立昌勝・関東学院大学名誉教授(刑法)だ。