一方、米紙のインタビューに応じたポンペイオ国務長官は北朝鮮の完全な非核化が実現した場合、米国が北朝鮮の経済再生を支援し、米国の民間企業による北朝鮮投資を認める方針を明らかにしている。電力網の構築や農業など具体的な分野にも言及しており、水面下ではすでに企業の対北朝鮮投資の話が進んでいる可能性が高い。
米国が非民主的な国家に対して市場開放を求める際には、たいていの場合、同じような政策パッケージが用意される。エネルギーや道路など基礎インフラへの投資と、市場開放を見込んだ金融システムの導入である。エネルギーと金融というもっとも重要な部分を押さえ、米国が得られる利益を最大化するシナリオだ。
だが、ガタガタになった経済を再生するためには、こうした投資だけでは十分とはいえない。北朝鮮の国民は貧困状態に陥っているとされており、こうした人たちの生活を支援するための資金も必要となる。問題はこうした無償援助に近い資金を誰が負担するのかという点である。
韓国への援助では日本企業が関与できた
実はこのテーマは日本にとってあまり好ましいものではない。なぜなら北朝鮮が国際社会に復帰することになった場合、同国が戦後賠償の話題を持ち出し、日本に対して高額の資金援助を求めてくる可能性が否定できないからである。
日本と韓国については1965年に締結された日韓基本条約において、原則としてすべての問題が解決済みとなっているが、この条約では北朝鮮の存在は無視されており、北朝鮮側は新たな条約が必要と主張してくる可能性が高い。
日韓基本条約の締結によって、日本は5億ドルの経済援助を韓国に対して行ったが、一方的に日本が損をしたというわけではない。経済援助の実施に際して日本の商社が関与できる仕組みになっており、日本国内に資金の一部を還元することができた。日本が各国に対して行った戦後賠償の多くに日本企業が関与しているが、こうしたスキームの構築には、日本の旧陸軍関係者が深く関与したとされる。
旧軍関係者がこうしたビジネスに手を染めることついては賛否両論があったが、少なくとも当時の日本の国際的な立場は高く、戦後賠償(あるいは経済支援)を迫られたとしても、それをビジネスにすることが可能だった。米国も米ソ対立という国際情勢から無条件で日本を支援してきたが、今の状況は当時とはまるで異なる。