トランプ米大統領は4月26日、1963年に起きたジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件に関する機密文書について、全面公開を引き続き見送り、3年半後の2021年10月までに改めて公開の是非を検討するよう中央情報局(CIA)や連邦捜査局(FBI)などの関係官庁に指示した。
トランプ氏は昨年10月、国立公文書館に保管されていた暗殺関連の非公開文書の全面公開を指示した。しかし、CIAやFBIが「情報源や外国政府に関する機密が含まれている」として一部文書の記述について公開に反対。トランプ氏は一部文書の記述に関し、180日間かけて公開の是非を決めるとしていた。その期限が訪れた今回、結局、全面公開は実現しなかった。
すでに事件から半世紀以上が過ぎているにもかかわらず、CIAやFBIがここまで公開を渋るのはなぜなのか。本当に彼らが主張するように国の安全保障上の理由からだけなのだろうか。
ケネディ暗殺関連文書をインターネットで多数公開する米民間団体、マリー・フェレル財団によると、総計36万8000ページを超す約2万1980もの文書が今なお全面的に非公開か、編集済みのかたちでしか公開されていない。同財団は今年3月、国立公文書館に公開書簡を送り、すべての文書を完全に公開するとともに、各政府機関に公開延期の理由を官報に掲載させるよう求めたが、実現していない。
残りの文書には何が含まれているのだろうか。確実にはわからないが、その多くはメキシコの首都、メキシコシティのCIA事務所にかかわるものとみられている。
メキシコシティには1963年9月、ケネディ暗殺犯とされるリー・オズワルドが訪れていた。暗殺の2カ月前のことだ。1990年代後半に公開された文書によれば、CIAとFBIはこの事実を知っており、オズワルドがメキシコのキューバ領事館とソ連大使館を訪ねたり、ケネディ殺害についておおっぴらに話したりしたことも承知していたという。ところがCIAなどはなぜか、暗殺事件直後に設立された政府の調査委員会(ウォーレン委員会)にこのことを報告しなかった。
CIAとオズワルド
取りざたされている理由はおもに2つある。ひとつは単純に、事前に犯行の予兆をつかんでいながら、暗殺を阻止できなかったことの責任を問われたくないから。情報機関もしょせんは官僚組織であることを考えれば、責任逃れに走る可能性はある。