コインチェックが史上最大となる約580億円の「NEM」流出事件を起こしてから、半年近くがすぎた。その間、コインチェックはマネックスグループが買収することになり、金融庁に登録済みの仮想通貨交換業者16社で構成される日本仮想通貨交換業協会が設立された。また、6月には韓国で仮想通貨の流出事件が起きている。仮想通貨交換所ビッサムがサイバー攻撃を受けて、約350億ウォン(約35億円)相当の「リップル」などの仮想通貨が盗まれたのだ。
仮想通貨にビジネスチャンスを見いだした企業は、続々と参入の動きを見せている。三菱UFJフィナンシャル・グループは2018年度中に独自の仮想通貨「MUFGコイン」を導入する予定で、みずほフィナンシャルグループも電子決済に特化した仮想通貨「Jコイン」を18年内に発行する予定だ。LINEやメルカリといったIT企業も参入を発表している。
一方で、世界的には規制の動きが強まっている。3月に行われた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では、各規制当局に対して「『仮想資産』動向の監視を求めること」で一致した。具体策に関しては金融活動作業部会(FATF)に一任するかたちだが、FATFのルールでは仮名取引が禁止されるほか、取引データが監督機関で確認できる体制が必要になる。
そのため、今後は取引所での本人確認厳格化と不正な取引を監視する仕組み、さらに租税情報交換などを通じて個人の取引データが国籍国との間で自動交換される仕組みが構築されることになるだろう。つまり、匿名性が高い暗号通貨などは利用が制限される可能性が高く、中小の取引所は淘汰されるものと思われる。また、日本においては顧客の資産と自己の資産を分別する分別管理が徹底されることになっており、一般的な商品取引と同じような規制構造がつくられることになるだろう。
ブロックチェーン技術を活用した仮想通貨のメリットについてはさまざまなところで語られているが、筆者は懐疑的な見方をしている。『今だからこそ、知りたい「仮想通貨」の真実』(ワック)に詳述しているが、仮想通貨の問題点や行く末について、今こそ立ち止まって考える必要があるだろう。
「通貨の3要素」を満たしていない仮想通貨
17年4月に施行された「改正資金決済法」では、世界に先駆けて仮想通貨に関する規制が盛り込まれた。同法では、仮想通貨を以下のような性質を持つ「財産的価値」と位置付けている。
(1)不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
(2)電子的に記録され、移転できる
(3)法定通貨又は法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
つまり、仮想通貨はお金に換えられる価値こそあれど、法的な裏付けのある法定通貨たり得ないということだ。
そもそも、通貨は「価値の保存」「価値の交換」「価値の基準」という「通貨の3要素」を満たしている必要がある。しかし、ときに20~30%も値動きするなどボラティリティ(価格変動の度合い)が非常に高い仮想通貨に「価値の保存」があるとは考えにくい。また、日本では売買目的の9割以上が投機といわれており、円やドルなどの法定通貨に交換して利益を得ることを主な目的としている時点で、仮想通貨が「価値の保存」を満たしているとも思えない。
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