また、仮想通貨は値動きが大きくリスクが高いことから、取り扱いに二の足を踏む小売店や飲食店も少なくない。そのため、仮想通貨を決済に利用できる環境は増えてきてはいるが、いまだ限定的であり、特にマイナーな仮想通貨は使える場所がほとんどないのが実情だ。そうした点に鑑みると、「価値の交換」にも疑問符がつく。
そして「価値の基準」だが、現在のように価格が乱高下を繰り返している以上は、当然ながら仮想通貨を「価値の基準」に据えるのは現実的ではないだろう。
つまり、仮想通貨は「通貨の3要素」のいずれも十分に満たしていないことになる。そもそも、仮想通貨は現物の紙幣や硬貨が存在せず、電子データにすぎない。法定通貨、たとえば円の場合は紙幣が破れたり燃えたりした場合は、面積の3分の2以上が残っていれば同額の紙幣に、5分の2以上3分の2未満が残っている場合は半額の紙幣に交換してもらうことができる。
しかし、取引所に預けている仮想通貨がハッキングなどで流出したり消去されたりしたとしても、必ずしも補償されるとは限らない。コインチェックは補償に応じたが、個々の取引所の対応次第というのが実情だ。
また、「ビットコイン」に代表される投機性の高い仮想通貨は、発行主体が明らかでないことが少なくない。法定通貨は国富(国家全体の正味資産)を裏付けとして発行されるが、発行主体が明らかではない仮想通貨の場合は、誰がどのような資産を裏付けにして発行されているのかがわからないわけだ。
つまり、価値を裏付けるものがないにもかかわらず「価値があるのかもしれない」とみなして売買されていることになり、そういった意味ではおもちゃの「子ども銀行券」と大差ないのである。
さらにいえば、仮想通貨は金融商品とも有価証券ともいえないため、有価証券を含む金融商品の取引や金融サービスを規制する「金融商品取引法」や「金融商品販売法」の適用外となっている。通貨ではなく金融商品でも有価証券でもないという、きわめて曖昧な存在なのだ。
「全損のリスク」を指摘する声も
そうした事実の一方でバブルが過熱している状況に、金融のプロたちからも懸念の声が続出している。
17年9月、JPモルガン・チェースの最高経営責任者(CEO)であるジェイミー・ダイモン氏がビットコインについて「チューリップ・バブルよりひどい」「(自社の社員が)取引したらクビだ」などと批判的な発言をしたことが話題になった。その後、ダイモン氏はブロックチェーンについては「偽物ではない」として姿勢をやや転換したが、18年2月にはドイツ銀行のマルクス・ミュラー最高投資グローバル責任者が「(同行の富裕層向け資産運用部門が)現時点で仮想通貨に投資するよう助言していない。全損の現実的なリスクが存在する」と発言している。
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