23日深夜まで及んだ東京オリンピック(五輪)開会式。そこで、椿事が発生した。
「トーキョーオリンピックタイカイノ カイカイセンゲンヲ ココニツツシンデ テンノーヘイカニ オネガイモウシ アゲマス」
約10分間にわたる演説の後、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長が慣れない日本語ながらそう述べた直後、天皇陛下による開会宣言が行われたのだが、なんと菅義偉首相と小池百合子・東京都知事は着席したままだったのだ。陛下が高らかに開会を宣言される中、小池知事は約7秒後、菅義偉首相は小池知事にワンテンポ遅れて8秒後に起立したのだ。「うっかりしていて起立がワンテンポ遅れた」とも言えない状況にTwitter上などでは「非礼」という言葉が飛び交った。
会場では何が起こっていたのか
東京都関係者は言いにくそうに話す。
「全世界中継されてしまったので、起立を促す立場だった関係部局の人間が叱責されているようです。事前に式次第は伝えられていたようなのですが、(開会式楽曲担当の)小山田圭吾氏や(ショー部門担当の)小林賢太郎氏の辞任が相次いだこともあり、当日まで式の内容に細かい変更があったそうで、ある意味、菅首相も小池知事も全容を把握していたとは言いがたい状況だったのではないでしょうか」
一方で、自民党衆議院議員秘書は次のように菅首相を弁護する。
「そもそもバッハ会長の演説が『Together(連帯)』を何度も繰り返すタイミングの計りにくい演説でした。しかも、組織委の式次第も良くない。本来であれば、バッハ会長が天皇陛下に振った後に、会場アナウンスなどで『全員ご起立ください』の一言くらいあるものではないのですか」
開会式の模様を見ていた日本在住の英国籍ジャーナリストは次のように驚き、悲しんでいた。
「今回の開会式のコンセプトはよくわかりませんでしたし、全体的にショーの演出も、出席者もすべての足並みがそろっていなかったように思えます。なにより、びっくりしたのは天皇陛下の開会宣言の時に、菅首相がボーッと座っていたことです。日本の皇室マナーには詳しくありませんが、愛国心や国への忠誠心という話以前に、国際的なイベントで、立場のある人物が当然しなくてはならない儀礼・マナーとして適切には見えませんでした。我が国の女王陛下に対し、ボリス・ジョンソン首相が同じことをしたら問題になります。ドレスコードのある晩餐会にジーンズで出席してはいけないのと同じです。
コロナ禍の対応でお疲れだったのかもしれませんが、日本国民は英国紳士並みにマナーを守り、皇室をみな敬っているイメージを持っていたので、軽いショックを受けました」
それでも小池知事は開会式に満足
一夜明けた24日、小池知事は東京都が設置した東京メディアセンター(TMC)で報道陣の囲み取材に応じ、開会式の感想を次のように語った。
「とても素晴らしい開会式であったかと思います。皆さんもそれぞれ気に入ったパートがあったかと思いますが、やはりドローンは圧巻でしたし、ピクトグラムが洒落てかつスポーツをすべて紹介するという意味でも、非常に意義があったと思っております。
最後の大取りが(女子テニスの)大坂なおみさん。まさにこの大会を象徴するようなそのような走りであったと思いますし、まさに希望の光が、灯(あかり)が灯ったと思っております」
いろいろな意味で物議を醸した開会式だったが、果たして後世の評価はどう下されるのだろう。
(文=編集部)