「こんな裏口入学は、これまで聞いたことがありません」
ある大学職員は、そう語る。
7月4日、東京地検特捜部は、文部科学省の「私立大学研究ブランディング事業」で東京医科大学に便宜を図る見返りに、同大に自分の息子を合格させてもらったとして、同省科学技術・学術政策局長の佐野太容疑者を受託収賄容疑で逮捕した。また同大の臼井正彦理事長(77)が関与していたとされ、理事長を辞任した。
「裏口入学といえば、寄附金などの名目で保護者が金を積んで子どもを入学させてもらうことで、かつてはこれが当たり前に横行していた時代もありました。今はもう、寄附金という名目でというのはアウトになりました。寄附金はボランティアで、完全に見返りなしで行うものになっています。今はもう裏口入学というのは闇の世界に入っていて、理事長や学長をよく知っているブローカーが、『5000万円寄附したいって言ってる人がいるんだけど、ついては子どもを入学させてくれないか』と話を持ちかけるわけですね。その裏金とは別に、ブローカーはお金をもらい、理事長や学長にも謝金が流れる可能性があります」(前出・大学職員)
今回のケースは、大学の研究を支援する事業に選定することが、子どもの入学の見返りになっている。文科省の官僚が大学などに便宜を図って、本人もしくは親族、知人が利益供与を受けることは、よくあることなのだろうか。
「発覚しない限り、わかりませんからね。確かに氷山の一角かもしれないですけど、普通に考えたらないんじゃないですか。ブランディング事業の選定にかかわっていたにしても、局長が理事長と会う機会はないと思います。逮捕された谷口というブローカーが口を利いたから成立した話で、レアケースだと思いますよ」(同)
佐野前局長と臼井前理事長を仲介したとして、元医療コンサルティング会社役員の谷口浩司が受託収賄ほう助容疑で逮捕されている。
「ブランディング事業というのは3000万円で5年ということで、1億5000万円になるわけです。これは研究用だけではなくて、わりと自由に使えるお金です。それだけではなく、うちの研究が文科省に認められたということで、大学のイメージアップにつながるし、教員たちのモチベーションも上がりますよね。5年たてば別の事業が出てくるかもしれないので、局長と親しくしてれば、それも通ると思うわけじゃないですか。それ以外でも、文科省にお伺いを立てなければいけない場面も結構あるので、息子を人質に取っているようなもので、局長はPTAになるわけで、理事長としたら“打ち出の小槌”でも手に入れた気分だったのではないですか」(大学関係者)