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吉澤恵理「薬剤師の視点で社会を斬る」

コロナ禍でペット需要が急増…飼う前に確認すべき「ペットの5つの自由」

文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 コロナ禍にあって家で過ごす時間が増え、ペットを飼う人が増加する傾向にある。ペットを家族の一員として大切にする飼い主がいる一方で、ペットの飼育放棄も大きな問題となっている。動物にも人間と同様に食、睡眠などの欲求があり、心があり、喜怒哀楽を感じている。ペットとの生活は人間にQOL(生活の質)の向上をもたらすが、同時に飼い主はペットにとってのQOLを考える義務がある。

コロナ禍にペット需要は増加

 掌に乗るほどの小さな子犬や子猫を見れば、多くの人が愛らしいと感じ、家に連れて帰りたいと思うだろう。ペットを飼うことで、人間の生活に癒しや潤いが生まれることは確かだが、ペットにとっても安らぎが感じられる環境を整えることが飼い主の責務である。ペットブームの影響で、安易なペット購入が増えているといわれるが、実際のところはどうなのか、子犬子猫専門ペットショップ「P’s-first」を運営するペッツファーストに聞いた。

「さまざまな報道等でいわれているように、ペット需要が増加していることは明らかだと思います。ペットの新規購入だけではなく、保護犬を引き取りたいというお問い合わせもいただきます。しかし、安易に購入するというわけではなく、以前からペットを迎えることを考えていて、コロナ禍で家にいる時間が増えたためペットを購入するきっかけになったという方が多くいらっしゃいます」(ペッツファースト広報担当者)

 ペットを自宅に迎える子犬、子猫の時期が、食事やトイレのしつけなどもっとも手がかかるわけで、コロナ禍で家にいる時間が多く、ペットの世話にかける時間が取れることも購入に踏み切るきっかけになるということのようだ。

「ペットを購入していただく際には、ペットと飼い主様の両者が幸せになることができるかということに留意し、十分なヒアリングとお話し合いをさせていただきます。また、最大2泊までのトライアルホームステイを行っています。実際に家にペットを連れて帰り、一緒に過ごすことで、飼い主様との相性や想像していなかったことなどにも気づき、冷静に購入を検討していただいています」(同)

 ペットショップで抱っこしただけではわからないことも多い。また、すでにペットを飼育している場合には、先住ペットとの相性も見ることができるトライアルホームステイは、飼い主にとってもペットにとっても有益といえる。

終生飼育と5つの自由

 動物愛護管理法では、 動物の飼い主は、その動物が命を終えるまで適切に飼養する「終生飼養」の責任があることが明確にされている。ペットの虐待や飼育放棄は、同法に触れる行為であることを広く知っていただきたい。また、環境省がペットの飼育に関して啓蒙に力を入れているのが「5つの自由」である。それは、英国の動物福祉法2006の第9条にある「福祉を保障するための動物の責任者の義務」であり、現在は多くの国で「5つの自由=動物のニーズ」として広く引用されている。

<5つの自由>
・飢えや渇きからの自由
・不快からの自由
・痛み、外傷や病気からの自由
・本来の行動する自由
・恐怖や苦痛からの自由

ペットの医療費

 種類によって差はあるが犬や猫の平均寿命は14~15歳で 、その間には病気をすることもあり、予測は不可能である。ペットを迎える際には、万が一、病気になった時の備えも重要だ。

 都内に住む20歳女性は昨年12月、待望だったトイプードルを家族として迎えた。

「1年以上、家族と話し合い、またペットショップにも何度も足を運び、実際に複数の犬と対面しました。そのなかで『この子だ!』と強く縁を感じて購入を決めたのが、大人しい性格のトイプードルの女の子でした。家に迎えてからは、家族みんなの心をつなぐ存在となり、とても大事にしています」

 ところが、トイプードルを迎えてしばらくたち、避妊手術を行った際に病気が発覚した。

「左足の同じ部位を痒がるような仕草が頻繁にあり、手術の事前検査の時に獣医さんに話したところ、トイプードルはパテラという膝蓋骨脱臼になりやすいため、手術時に足の状態を確認するためにレントゲンを撮ってもらいました。すると、心配していたパテラではなく、左足に先天性股関節脱臼があることがわかりました」

 先天性股関節脱臼とは、本来、骨の形成不全で股関節がはまっていない状態である。大型犬では後天性の股関節脱臼がみられ、先天性も後天性も治療法は手術を行うが、トイプードルのような小型犬には非常に珍しい症状であると、獣医師は説明したという。

「獣医さんによると、左足の同じ箇所を痒がるそぶりは、痛みがあるせいかもしれないとのことで、ずっと痛みに耐えていたのかと思うと、なんとか治してあげたいと思いました。獣医さんと相談し、今年の7月に手術を行い、現在は元気にかけ回っています。早期に気づいてあげることができてよかったと思います」

 ペットの健康を守るのは飼い主の役目ではあるが、ペットを飼う際に十分に考慮しておくべきことのひとつが、医療費である。ペットの医療は高いイメージがあるが、手術ともなると、さらに高額になるだろう。

「手術と聞いたときは正直、医療費がとても高いことを覚悟しました。しかし、我が家では購入時にペット保険に加入していたため、窓口負担は3割で済みました。当初は、病気することはないだろうけど、お守り代わりにと加入しましたが、本当に加入していてよかったと思います」

 保険会社によって掛け金と保証内容は異なるが、加入することで窓口負担が一部となるため、ペットのQOLを守るためにはかけておいたほうがいいかもしれない。

ペットを飼育できなくなったら

 前述したように動物愛護管理法では、終生飼育が飼い主の責務としているが、さまざまな事情によって飼育の継続が困難となる場合もあるだろう。そういった際は、置き去りにしたりすることなく、購入したペットショップや各都道府県の動物愛護相談センターなどに相談し里親を探してほしい。

「ペッツファーストでは2007年9月より、栃木県日光市にて日本初のペットケアセンター、『ペッツファースト ペットケア&アダプションセンター日光』を運営しています。ペットが高齢化し、自宅での飼育が難しいというケースには『老犬ホーム』、さまざまな事情で飼育の継続が難しいという飼い主様には『里親探し代行サービス』を行っております。現在の老犬ホーム入居頭数は7頭、新しい飼い主を見つけた犬猫は100頭を超えています」(前出ペッツファースト広報担当者)

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老犬ホームの犬(ペッツファースト提供)

 10月1日に緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が全面的に解除されたことで、街や観光地は多くの人で賑わいを見せている。その半面、緊急事態宣言中に比べて家にいる時間が減る可能性があるが、ペットの5つの自由を尊重することを忘れないでほしい。
(文=吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト)

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

吉澤恵理/薬剤師、医療ジャーナリスト

1969年12月25日福島県生まれ。1992年東北薬科大学卒業。福島県立医科大学薬理学講座助手、福島県公立岩瀬病院薬剤部、医療法人寿会で病院勤務後、現在は薬物乱用防止の啓蒙活動、心の問題などにも取り組み、コラム執筆のほか、講演、セミナーなども行っている。

吉澤恵理公式ブログ

Instagram:@medical_journalist_erie

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