「TRCは、あれだけボロボロに非難したCCCとまた組むというんですよ。(賛成派の)私ですら、どうなってるのって、そりゃあ思いますよ」
そうあきれるのは、神奈川県・海老名市の市議会関係者だ。3年前、佐賀県武雄市に続く第2の“ツタヤ図書館”として新装開館した海老名市立中央図書館。11月17日付当サイト記事『海老名市、ツタヤ図書館の継続ありきで選定の疑惑…募集・審査過程に不可解な点』にて、海老名市が、レンタル店「TSUTAYA」を全国展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)と図書館流通センター(TRC)を、引き続き市立図書館の指定管理者として選定した顛末について報じた。
今回は、その決定の背景にある、自治体と事業者の“思惑”について、さらに詳しく迫っていきたい。
競合なしの茶番劇
クライマックスは、9月下旬にやってきた。
筆者のもとに「ついに、あのTRCがJV(共同事業体)離脱」「TRCはCCCと決別して単独応募」との未確認情報が流れてきたのだ。
「CCCとTRCは提携を解消せず、これまで通りJV継続」と早くから決め打ちしていた筆者も、慌てて記事を書く準備を始めた。
しかし、それがガセネタであることは、間もなく判明した。週明けの議会で「現在、指定管理者の公募に何社が応募しているか」と質問された教育次長が「一事業体のみ」と回答したのだ。
TRCがJVを離脱して単独応募するのであれば、CCCと全面対決となって「一事業体のみ」ではなくなる。可能性として残るのは、これまで通りCCCとTRCのJVのみ応募と、TRCまたはCCCのどちらかだけが単独応募するパターンだが、TRCが黙って海老名から完全撤退するはずがない。したがって、この瞬間に、これまで通り2社が提携したJVでの応募となり、すなわちツタヤ図書館の継続がほぼ確定したといっていい。
誰がなんの目的でガセネタを流したのかは謎だが、「両社が正面から激突するのなら、推移を見守ろう」という雰囲気が醸成され、9月議会でのCCC継続に反対する議論がいまひとつ盛り上がりに欠ける事態となったのは確かだ。
ちなみに、説明会には6社が参加したものの、TRCとCCCのほかは、どこも応募しなかった。競合他社は、あからさまな“出来レース”の雰囲気を察したのか、早々に不参加の決断を下していたのだ。
「公共工事の入札だったら、談合で受注者が決まると、本番では何社も“お付き合い”で入札しますが、図書館の指定管理者はプロポーザル方式なので、ペーパー1枚では済みません。企画書等の応募書類を作成するのに相当の手間暇がかかるので、どこも下見には来ても応募はしないのでしょう」(市議会関係者)
興味深いのは「もし、CCCが単独で指定管理者に応募していたら、議会では反対意見が続出していたはずで、承認されないかもしれない」との声が上がっていたことだ。
それならば、TRCにとっては、3年前、CCCと運営方針で対立したときに、石井昭社長兼CEO(最高経営責任者)が「今後、CCCとは一緒にやらない」と宣言した通り、JV離脱を実行に移す絶好のチャンスだったはず。