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南青山・児童相談所建設、反対住民の“誤解”…学歴重視の人ほど虐待しやすい傾向

文=横山渉/ジャーナリスト
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南青山・児童相談所建設、反対住民の“誤解”…学歴重視の人ほど虐待しやすい傾向の画像1青山1丁目交差点(「Wikipedia」より/Rs1421)

 東京都港区の一等地、南青山に建設予定の施設に対して、一部の住民が猛反対している。

 問題となっているのは、子ども家庭支援センター・児童相談所・母子生活支援施設の複合施設で、「港区子ども家庭総合支援センター(仮称)」。同センターは、多様な文化や人との出会い・交流、学習の場として子育てを応援すると共に、支援機能と児童相談所の専門機能を一体化させて総合的に支援していくという。

 住民の反対理由はさまざまだが、その多くは児童相談所などへの誤解と偏見、思い違いからくるものだ。たとえば、「施設で保護している子どもが脱走したらどうする」と不安視する声がある。これに対し、都内児童相談所に心理の専門家として19年間勤務した経験を持つ家族問題カウンセラーの山脇由貴子氏はいう。

「児童相談所は相談機関なので、基本的には相談しに来る人を想定してつくられています。現在は虐待通告の増加により、虐待対応に追われているのが現実です。併設される一時保護所で預かるのは虐待されている子どもが圧倒的に多いものの、一部には触法少年(いわゆる非行少年)もいます。しかし、それらの子どもは外に出しません。また、触法少年は早く家に帰りたいと考えているので、施設では大人しくしています。ルールは厳しく、職員が子どもをきちんと見ていますので、センサーもたくさんあるので、脱走はできません」

 また、反対する人のなかには、「施設から近隣の小学校に通う子どもは勉強についていけず、辛い思いをするのではないか」という声もあるが、これに対しても山脇さんはこう話す。

「まず、一時保護所の子どもは外に出ませんし、学校には通いません。併設される母子生活支援施設は母子が生活する場所なので、近隣の公立学校に通う可能性はあります。しかし、学校側は子どもに辛い思いをさせないようにするし、児童相談所もあります。住民から『幸せな家族を見て辛くならないか』という意見もありましたが、そういう心のケアをする職員もいるし、そもそも幸せの基準なんて人それぞれ違います。母子生活支援施設はシェルター機能だけでなく、自立支援の場なので、長期滞在してもらう場所ではありません」

 山脇さんは新設された相談所にも勤務経験があるが、地域住民とのトラブルは一切なかったという。ただ、住民から「ブラインドは開けないで」など、さまざまな要望はあったといい、山脇さんは「そうした声に耳を傾けながら妥協点を探ることが必要」と語る。

法改正で都から23区へ順次業務移管の流れ

 建設費総額100億円に対しても、税金の使い道という点から疑問の声が上がった。山脇氏は「港区内にほかに適当な土地がないことを専門家から説明してもらい、建設費予算の使い道をしっかりと情報公開しながら妥当かどうか議論してもらえばよい」と語る。

 では、なぜ、こうした施設を新しくつくる必要があるのかといえば、虐待やDV(家庭内暴力)が増えるなかで、圧倒的に施設も担当職員も少ないからだ。現在、都の運営施設は11カ所あるが、各施設には管轄区域があり、管轄外住民は利用できない。2016年の児童福祉法の改正により、各区で施設を建設・運営することができるようになり、都から各区に業務移管していくのは決定事項だ。管轄区域が広すぎると、虐待があっても、すぐに駆けつけることができなければ手遅れになってしまう。今後は、区単位での新設が進むだろう。今回、南青山に建設予定の施設は港区が運営するもので、利用者は港区住民に限られる。

「港区にだって虐待問題はあるはず。南青山にだってDVがあるかもしれない。お金があるから虐待しないというわけではない。学歴にこだわる人ほど、教育的に虐待を起こしやすい傾向があります」(山脇氏)

 そして山脇氏は、今後についてやや心配だと話す。

「露骨な反対運動が表面化してしまい、建設後に施設を利用したい人や相談したいという人たちが行きづらくなるかもしれません。そうすると、虐待が増えたり、問題が進行したりということにもなりかねません。子どもたちに『自分たちは厄介者』と思わせないようにしてほしいです」

 港区は、当該施設が苦しんでいる子どもや親を助けるすばらしい施設・場所であることをもっと積極的にPRする必要があるだろう。
(文=横山渉/ジャーナリスト)

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