ごみ清掃工場の長期包括運営委託契約(以下、長期包括契約)は、民営化の一手法として計画された。焼却炉の建設は、規模によって数十億円から数百億円の費用が掛かる。市町村が建設するにあたり、建設費は国の補助金(交付金を含む)の対象となり、起債建てを行い、15年から20年の期間を掛けて借金返済をしてきた。一方、炉の運転管理や維持管理は補助金の対象とならず、各年度ごとに契約を行ってきていた。近年、この焼却炉建設工事契約に、運転管理を含めて一括して契約したり、長期包括契約として運転管理と維持管理を組み合わせて契約する事例が見られる。
建設工事契約は、成果物の完成や欠陥のない成果の提供が報酬を支払う条件である請負契約の形態で締結されるべきであり、炉の管理のように「善良な管理者の注意を」もって求められた業務を実施すればよい委託契約とは異なり、より厳しい契約形態といえる。
ところが、柳泉園組合(東京都)が行った長期包括契約という委託契約では、大規模改修工事(基幹部分の総取り換え工事)の契約が、委託契約のなかに含まれていることがわかった。廃棄物学会誌での報告書(※1)では大規模改修工事は含めないことが望ましいとされ、特殊な事例である。
自治体が行うごみの中間処理の運営委託のなかに、大規模改修工事を紛れ込ませ、受託事業者に大規模改修工事の必要性の有無や施工計画などの一切の権限を含めて任せてしまうのであれば、これは自治体による業務放棄であり、丸投げである。このようなことは法的に問題ないのだろうか。
柳泉園組合の事例では、どのような問題があったのか。長期包括契約の実態を見ながら整理したい。
まず、柳泉園組合の長期包括契約では、住民が裁判所に訴えて、今も住民訴訟で争われている。構成3市(西東京市、東久留米市、清瀬市)の住民が、2017年に住民監査請求を行ったうえで住民訴訟に訴えた時の新聞報道を見たい。
運営委託中止を求めた住民訴訟が状況を変える
17年1月26日付東京新聞は、『運営管理委託 中止を』『3市ごみ処理「柳泉園組合」周辺住民が提訴』と見出しを打って、次のように報じた。