気になるのは自殺者の増加率上位県だ。トップは奈良県で前年比30人(16.0%)増。次いで佐賀県で21人(15.1%)増、山梨県の22人(12.1%)増が続く。逆に低下したのは、徳島県34人(27.6%)減、愛媛県65人(22.4%)減、鳥取県21人(21.0%)減となっている。
時間帯は昼間、曜日は月曜日
自殺の多い月はいつなのか。18年のデータでは3月がもっとも多く1989人。5月は1845人で、10月の1742人と続く。09年以降のデータを見ても、3月か5月のいずれかがもっとも自殺者が多い月となっている。年度の変わり目、新生活の疲れ、五月病などが背景にあるものと思われる。
厚労省のデータをさらに検証しよう。「地域における自殺の基礎資料」が年別にまとめられていて、都道府県別の各月の自殺データの詳細が記載されている。自殺者数、職業別、場所別、手段別、時間帯別、曜日別、原因・動機別などに分類されている。直近の18年11月のデータを見ると、手段別では「首吊り」が949件で飛び抜けている。「飛び降り」は144件、「練炭等」が105件、「飛び込み」41件などとなっている。
この資料を18年1月から11月分を集計して、時間帯と曜日をチェックしてみた。時間帯では「12~14時」が1380件、「0~2時」が1299件、「14~16時」が1266件、「6~8時」が1265件、「4~6時」が1252件となっている。自殺者の2割が12時から16時の日中に命を絶っている。もっとも少ない時間帯は「22~24時」の690件で、「20~22時」の692件と拮抗している。「18~20時」も863件と少なめだ。夕方から深夜にかけては家族と過ごす時間が含まれていることが関係しているのだろうか。
曜日別はどうか。もっとも多いのは週初めの月曜日で2829件。次いで木曜日の2630件。もっとも少ないのは土曜日で2222件、その次が日曜日で2384件となっている。学校や職場が始まる月曜日は気が重くなりがち。土日の家族や友人とのコミュニケーションの図り方が、自殺を思いとどまらせるポイントになってくるのではないだろうか。
自殺者の総数が減少傾向を続けているとはいえ、年間2万人という数字は重い。とりわけ、これからの日本を担っていく未成年の自殺者が増加傾向にあることは深刻だ。学校や就職を取り巻く環境をいかに改善していくか。国や自治体のきめ細やかな対策・対応が望まれる。
年間の自殺者は1997年まで2万人台で推移したが、98年から14年連続で3万人を超えた。最多は2003年の3万4427人。最少は1981年の2万434人だった。
(文=山田稔/ジャーナリスト)