4年に一度の統一地方選挙が行われているが、多くのビジネスパーソンは「自分とは関係ない」と考えているのではないだろうか。しかし、政治の世界にも人手不足の波が押し寄せており、特に地方議員は“立候補すれば誰でも受かる”状況になりつつあるという。
そこで、選挙プランナーとして数多くの立候補者を当選させてきた松田馨氏に、地方議員の現状や会社員が政治家へ転職する意義などを聞いた。
無投票の裏で行われている“潰し”戦略
2015年の統一地方選挙で行われた道府県議会議員選挙では、立候補者が定員以内のために無投票となった地域が約22%もあったという。つまり、議員の5人に1人は届けを出すだけで当選したことになる。
香川県に至っては、全議席の約3分の2が無投票で決定した。同県議会の議員報酬は月額80万円、さらにさまざまな手当がつく上、議会に拘束される日数は年100日程度。求人情報としてはまれに見る好条件だが、それにもかかわらず競争倍率が1倍を割っているのはなぜなのだろうか。
「無投票でも一概に『誰でもなれる』とは言えません。こうした地域では、地元とかかわりの深い重鎮の議員がいて、争っても勝てる見込みがないので対抗馬が出ないというのが実情です。このようなベテラン政治家の議席は“指定席”と呼ばれています」(松田氏)
全国津々浦々の選挙に携わる松田氏は、無投票の裏には出馬を取りやめさせる「潰し」もあると指摘する。
「私がかかわったある県議選では、定数2に対し当初は立候補者2名でした。そこに3人目が名乗りを上げようとしたのですが、出馬を思い留まるように両陣営がそれぞれに動いて『潰し』にかかりました。もちろん合法の範囲内ですが、ここまでするのかと、正直驚きましたね」(同)
表面上は無投票であっても、水面下では激しい競争が行われているようだ。 とはいえ、市町村議会にまで広げれば定員割れの選挙区がさらに増え、無投票当選の可能性も高まる。
18年の地方選挙では、群馬県昭和村、山形県庄内町、長野県小谷村の議会が定数割れとなった。結果的には避けられたが、宮城県大崎市、富山県黒部市など、定数割れの可能性を危惧された自治体も多い。
「確かに、人口減少に悩む市、町、村では地方議員のなり手が不足しています。そのような地域で立候補すれば地方議員になれる確率は高い。しかし、定数割れするような自治体は税収が少ないので予算も厳しく、議員報酬が月20万円以下ということもあります。議員は特別職公務員なので、そこから国民年金や社会保障費を引かれると、家族で生活するには厳しい金額ですね」(同)
前述した、定数割れの可能性があった宮城県大崎市の議員報酬は月額42万8000円で十分な報酬と言える。これ以下の水準ではわざわざ転職する魅力に欠けると思いがちだが、条件によってはおすすめできるという。
「テレワークが可能な企業勤めの方やフリーランスで働く場所を問わないような方は、Iターンして地方議員と兼業という選択肢があります。政令指定都市や中核市など人口の多い市では取り組む課題が多く難しいですが、過疎地域では時間を有効活用すれば兼業は可能でしょう」(同)