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たとえば、18年9月の台風21号では電線が切断され、のべ220万戸で停電が起きたにもかかわらず、関西電力の停電情報システムに障害が起こり、停電エリアと規模を把握できるのはSNSだけになってしまった。こうした状況のなかで、「FASTALERT」には関西全体のリアルタイムな停電情報が市区町村別に集約されており、大手メディアにとっても大きな情報源となった。
「報道にとっては警察・消防以外の新たな取材・情報源になっているのではないか」と米重氏は言う。
また、18年2月には、佐賀県で陸上自衛隊のヘリコプターが墜落する事故が起きた。当時、防衛省は「着陸炎上」「不時着」といった説明をしていたが、墜落するヘリの目撃証言や映像が「FASTALERT」の情報で明らかになった。これを受けて、共同通信の横浜支局は事実関係を確認して速報した。神奈川県警の広報は、それからかなり後だったという。
このほか、情勢調査で新聞社はこれまで人海戦術を行ってきたが、今はコストパフォーマンスの関係で難しくなってきている。コストの安い機械を使った調査も行われるようになっているが、人の架電に比べ、回答率が低くなる。しかし、米重氏らは機械並みのコストと人間並みの回答率を誇る独自の調査方法を確立。低コストで情勢調査ができるようになった。こうした調査をどう活用するかが、メディアにとっては大きな意味を持ってきている。
その一方で、メディアがこれまでの体制から脱しなければ何も変わらない。その点をどう変えていくのかというのも、これからの腕の見せどころなのかもしれない。
(文=松崎隆司/経済ジャーナリスト)
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