秋篠宮家の長女、眞子さんの夫である小室圭さんの母、佳代さんが元恋人に「貢いだ金を返して」と1600万円を要求し、警察トラブルになったと「週刊文春」(9月22日号/文藝春秋)が報じている。
「文春」によれば、この元恋人は、佳代さんより20歳余りも年上の彫金師の男性A氏で、夫が38歳で自殺した後、同棲していた時期がある。しかも、A氏が前立腺の病気で手術を受けた際には、同意書の書類に佳代さんが署名し、入院中は甲斐甲斐しく世話をしたという。佳代さんはA氏との再婚を夢見ていたようだが、息子の圭さんが拒絶したため、再婚はかなわなかったらしい。
その後、佳代さんは、当時同じマンションに住んでいた外資系商社マンのX氏と交際するようになり、婚約。このX氏が大学の授業料やアナウンススクールの入学費などの名目で小室さん母子のために用立てた約400万円が「贈与」なのか「借金」なのかをめぐってトラブルになったことは記憶に新しい。国民的関心事となったといっても過言ではないが、この金銭トラブルは、昨年11月12日、圭さんが都内の法律事務所でX氏と面会し、約400万円の解決金を支払うことで合意したため、一応けりがついたようだ。
今回「文春」で報じられたのは、佳代さんが抱えるもう1つの金銭トラブルということになる。記事によれば、佳代さんが最近になって、交際期間中にA氏のために使った生活費などに慰謝料を加えた金額1600万円を返すようA氏に要求したという。するとA氏は神奈川県警を訪れ、「多額の金銭を要求されて、困っているんです」(「文春」より)と相談したというのが事の顛末のようだ。
すさまじい金銭への執着の裏にある<例外者>特有の正当化
今回の報道で驚くのは、佳代さんのすさまじいばかりの金銭への執着である。もちろん、その背景には経済的な不安があるのだろう。佳代さんは昨年10月下旬、約15年間勤めた都内の洋菓子店を退職しており、現在は月に約9万円の遺族年金などで生活しているからだ(「文春」より)。
退職によって収入の基盤を失った佳代さんが、お金がなくなるのではないかという喪失不安にさいなまれたとしても不思議ではない。一般に、喪失不安が強いほど、お金に執着するのが人間という動物だ。
そういう事情を考慮しても、佳代さんの金銭への執着には驚くしかない。その一因として、この連載で繰り返し指摘してきたように、佳代さんが<例外者>ということがあると思う。<例外者>とは、子どもの頃に味わった体験や苦悩ゆえに「自分はもう十分に苦しんできたし、不自由な思いをしてきた」と感じており、「不公正に不利益をこうむったのだから、自分には例外的な特権が与えられてしかるべきだ」と思い込んでいる人間である(「精神分析の作業で確認された二、三の性格類型」)。
何を「不公正」と感じるかは人それぞれである。容姿に恵まれなかった、貧困家庭に生まれた、親に愛されなかった・・・など、本人が不利益をこうむったと感じ、運命を恨む権利があると考えれば、それが自分は<例外者>だという思い込みにつながる。
佳代さんの場合は、二間ほどの借家で育ち、母(圭さんにとっては祖母)がリウマチを患っていたことだろう。こういう苦労を幼少期に味わった人は、「自分が苦労した分、あらゆる損害賠償を求める権利があるはず」と思い込むことがある。こうした思い込みに、夫を自殺で失ったことによる孤立や困窮も拍車をかけたに違いない。
<例外者>は、自分がいかに不幸だったか、どれだけ苦労したかを強調して、例外的な特権を要求することを正当化しようとする。小室さん母子が、佳代さんの元婚約者X氏が用立ててくれた約400万円を「借金」ではなく「贈与」だと主張し続けてきたのも、<例外者>特有の自己正当化によると考えられる。
また、今回報じられた元恋人のA氏に対する1600万円の要求も、<例外者>特有の「あらゆる損害賠償を求める権利があるはず」という思い込みにもとづくように見える。だから、たとえA氏が警察に相談する事態になっても、佳代さんは自己正当化を続け、自分が悪いとは思わない可能性が高い。
佳代さんの喪失不安を和らげる最善の方法は、ニューヨークに住む息子夫婦が呼び寄せてくれることだろう。だが、圭さんは司法試験に2度も落ち、今は7月に受けた3度目の試験の結果を待つ身だが、再受験者の合格率は18%という狭き門なので、またまた不合格という事態も十分想定される。そうなれば、佳代さんの喪失不安はさらに強くなり、新たな金銭トラブルが勃発するのではないかと危惧せずにはいられない。
(文=片田珠美/精神科医)
参考文献
ジークムント・フロイト「精神分析の作業で確認された二、三の性格類型」(中山元訳『ドストエフスキーと父親殺し/不気味なもの 』光文社古典新訳文庫)