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あの早稲田大学国際教養学部、超難関化の理由…親の経済力&英語力のみで合格は嘘?

取材・文=文月/A4studio
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早稲田大学国際教養学部のHPより

 名実ともに日本トップクラスの私立大学として知られる早稲田大学。大手予備校・河合塾によると偏差値は62.5~70.0ほどとされており、かなりの難関大学である。しかし、あるTwitterユーザーが8月に投稿した以下のツイートが話題になっていた。

<早稲田国際教養というのは、
・勉強が全然できない人が
・親の資金力による「経験ブースト」か「英語ブースト」を受けて
・早慶卒になれるバカ専用裏技ルート
だったんだが、その裏技が有名になりすぎてじわじわ偏差値(とはいえ他学部と比較しにくいもの)が上がってきてしまっている>(原文ママ)

 上記のツイートは10月5日現在、1.4万もの“いいね”を獲得している。

 通称、SILS(School of International Liberal Studies)と呼ばれる早稲田大学国際教養学部。2004年に開設され、英語を共通言語としており、日本語を母語とする学生には1年間の海外留学を必須にするなど高い国際感覚を養うカリキュラムが整えられている。留学が必須というだけでレベルが高そうな学部だが、投稿主いわく、資金力のある親のもとで経験と英語力を身に付ければ簡単に入ることができたとのこと。コメント欄では賛同する声が多く、なかには入学のハードルの低さと親の資金力という要素から、「表の裏口入学」と揶揄する声も出ている。

 そんな同学部の偏差値が近年上昇し、合格するのも難しくなってきているというのだが、今回は大学ジャーナリストの石渡嶺司氏にその実情について聞いた。

今も昔も簡単ではない、英語資格がほぼ必要な入試形態

「前提として、早大国際教養学部は今も昔も難関といえる難しさです。河合塾の基準だと、現在の偏差値は70.0と早稲田トップクラスの高偏差値。2004年開設当初の偏差値も65.0と現在の70.0よりは低いものの、十分に難関といえる難しさでしたから、この投稿の主張はやはり極端な気がします。

 しかし、2004年当時の早稲田大学全学部の平均的な偏差値に比べれば、65.0という数字は比較的低く、英語留学などの経験があれば入りやすかったのは事実でしょうが、現在は開設当初よりも偏差値が高くなっており、難易度が上がっています。ですから難易度の上昇という観点で見ると、この投稿内容は正しいといえますね」(石渡氏)

 では、ここで早大国際教養学部の入試形態について確認しておこう。

「SILSにはAO入試(総合型選抜)と一般選抜の2種類の入試形態があります。AO入試は出願資格がやさしい半面、英検、TOEFL iBT、IELTSから1つ以上の英語資格が必須です。そのうえ、英語の筆記試験、面接もあり内容はかなり高レベルとなっています。

 一般選抜は共通テスト、英語の個別試験の受験に加え、こちらも実質的には英語資格を必要とします。共通テストは国語が必須で数学、理科、社会から1科目を選択することになっており、得点率は83%以上とかなりの高得点を要求されます。これは社会・国際系の国公立だと一橋大学社会学部と同じ得点率になっていますので、それだけ難関だということです」(同)

 ちなみに一般選抜のほうは、やはり英語資格の有無が合格するための肝になるそうだ。

「一般選抜では、出願時に英語資格を提出できます。一応任意とはなっていますが、入試の配点に大きく影響してくるので、実質的にはほぼ必須。というのも、早大国際教養学部の一般選抜は200点満点でして、共通テストの国語と選択1科目を合計100点として換算します。そこに英語個別試験の80点を追加する構成になっているのですが、残り20点分が英語資格の内容によって決まるんです。

 使用できる英語資格はAO入試と同じく英検、TOEFL iBT、IELTSの3つで級数や得点数によって加点数が変化。たとえば、英検だと大学上級クラスの1級で最高点の20点が加点されますが、準2級以下は提出しても0点。準2級は高校中級程度といわれるので、SILSはそれだけ高い英語力を持つ受験者を求めているということですね」(同)

英語力が高いだけでは、大東亜帝国クラスも怪しい?

 英語力の高さが合格のキーとなるのは、ほぼ間違いないだろう。

「とはいえ、英語力だけで簡単に合格できる難易度の学部ではないでしょう。ただ試験科目は少ないので、帰国子女や留学経験者などでもともと英語力が高い人であれば、早稲田大学のなかでは今でも入りやすいといえる学部かもしれません。

 早稲田大学よりワンランク下とされる上智大学や国際基督教大学は、早稲田大学国際教養学部の学生とだいたい同じような学力、家庭の学生が通っているイメージです。一般的にはこの2つの大学よりも早稲田のほうが偏差値、ブランドイメージ的な理由で難しいと思う方が大半でしょう。ですが国際教養学部に限っては、英語力があれば早稲田の他の学部より難易度が低くなりやすいので、実質的には上智大学や国際基督教大学と同じ難易度になる、という見方もできます。

 また就活で国際教養学部の学生は企業から高評価されやすいと思います。1年間の留学経験が必須となっているので、英語ができてグローバルな感覚に優れている学生だと会社の人事の目には映るからでしょう」(同)

 早稲田大学よりもひとつ下のランクといわれている上智大学と同等レベルということであれば、確かにほかの早稲田大学の学部と比べると若干入りやすいのかもしれないが、難関であることは事実だろう。

 留学が条件となっている大学は、学費や現地での生活費などを考えると家庭からの多額の援助に頼らざるを得ない。国際教養学部に通う学生の保護者は経済的に豊かで、英語に理解がある人が多いのだろうか。

「その傾向はあると思います。学生の保護者はグローバル系企業の駐在経験者、役職者が多く、なかには企業経営者や大企業幹部クラスも珍しくありません。この前提ですと、当然経済的にも裕福な家庭が多くなるので、子供は留学などの経験がしやすいのでしょうね」(同)

 英語力だけを高めることによって、コスパ良く難関大学に入学できるといったケースはあるのか気になるところだ。

「英語力だけ、となると面接入試になりますね。しかし、現実的には高い英語力だけで入学できる大学はかなり限られてしまいます。経営が厳しいFラン大学などは喜んで入学を受け入れるところが多いかとは思いますが、現在は大東亜帝国(大東文化大、東海大、亜細亜大、帝京大、国士舘大)クラス以上の大学になると、英語力だけで入学できるほど甘くはないはず。2010年代前半ぐらいまでは高い英語力を駆使して進学できる中堅大学もありましたが、2010年代後半に首都圏の私立大入試の競争が激化してからはほぼ不可能になりました。

 また2020年度に大学入試改革が行われて以降、大学入試面接では大学で勉強する意欲を聞かれるようになったことも大きいです。今までの大学入試の面接では、『大学に入って何を勉強したいのか』という質問が主でしたが、『大学入学までの高校時代何をしていたのか』から『卒業後のキャリアプラン』まで幅広い視野を要求されるようになっていますからね」(同)

経験が学力と同等の武器になる時代が到来?

 8月下旬、「学歴中心の社会から経験中心へ」という起業家の平原依文氏の発言がネット上で炎上騒ぎになった。平原氏は、学歴を重要視しすぎた日本社会では、高学歴の人が良い企業に就職し、高収入を得る連鎖が続き、格差が増大していると考察。そこで、学歴ではなく個人が持つ唯一無二の経験を重視する経験重視社会にしていくことが、結果を出せる社会になると主張した。

 これに対し、イェール大学助教授の成田悠輔氏は、経験重視社会は最も格差が広がる社会だと反論。実際にアメリカの大学入試では、受験者がどれだけの経験、実績を積んできたかを出願書に書き、その内容の充実度によって合格が決まるとのこと。そのため、平均年収の高い親が子供に多様な経験させるためパッケージツアーに参加させることが珍しくはないと指摘した。

「経験」という言葉がキーワードとなりつつある現代。英語力など特定の強みに依存した勝負はできないものの、親の資金力によって得られる経験は学力と同列の武器になるかもしれない。

「経験力のある学生が重宝されるようになる時代ではあります。先に申し上げた通り、英語力一発で入学できることは少ないですが、『帰国子女です。留学で英語を頑張りました』と言えば、間違いなくプラスに働くでしょう。また経済的に余裕のある家庭は子供を予備校に通わせるので、実質的にはアメリカのパッケージツアーと同じような事象なんて見方もできますね。現に中学受験の世界はまさにそうで、資金力があってはじめてスタートラインに立てる……ということが常識になってきています」(同)

 早稲田大学国際教養学部はもちろん、ほかの難関大学でも特定の強みの一点突破で合格できる時代は終わりを告げつつあるようだ。

(取材・文=文月/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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