経済学者で米イェール大学助教の成田悠輔氏が日本の高齢化対策について「高齢者の集団自決、集団切腹みたいなのしかないんじゃないか」と発言したことが、極めて大きな問題になってきている。
この発言は、成田氏が不定期でMCとして出演していたネットニュース番組『ABEMA Prime』の2021年12月17日放送回にて、高齢化の「唯一の解決策」として、「結局、高齢者の集団自決、集団切腹みたいなのしかないんじゃないか。僕はこれを大真面目に言っていて、やっぱり人間は引き際が重要だと思う。別に物理的な切腹ではなくて、社会的な切腹でもいい。過去の功績を使って居座り続ける人がいろいろなレイヤーで多すぎる。これがこの国の明らかな問題だ」と語ったもの。
成田氏はのちに、「切腹や自決は議論のためのメタファー(隠喩)で、肉体的なものだけでなく、社会的・文化的なものも含めた色々な形があり得ます」と釈明しているが、アメリカ、イギリス、ドイツなど欧米各地のメディアでも一連の発言が取り上げられ、物議を醸している。
発言が波紋を広げている状況を受けて、実業家のひろゆき氏は自身のTwitterで「比喩で言った話が本気で言ったかのように伝言ゲームが始まってる状況」と分析し、成田氏を擁護した。すると、ひろゆき氏に対しても批判の声が続出。
その後、ひろゆき氏と成田氏のトークが好評を博していたYouTube番組『日経テレ東大学』の降板が決定。さらに、『ABEMA Prime』からの卒業も発表。成田氏はTwitterで「いい機会なので、私は両方の番組から引退します。1年ちょいありがとうございました。また22世紀にお会いしましょう」とつづったが、成田氏の起用を見送る動きは、テレビ番組はもちろん、ネット番組にも広がっているようだ。
そのほか、成田氏が所属するイェール大学も、公式サイト内に掲載している成田氏のプロフィル欄に、「成田教授のメディアや学問に対する意見は彼個人のものであり、経済学部やイェール大学の見解を代表するものではない」などと記述を加え、成田氏の発言に関する批判が同大学に飛び火することを嫌った様子がみえる。
そんななか、神奈川県と神奈川労働局(厚生労働省の地方支分部局)が共同で設置している「かながわ就職氷河期世代活躍支援プラットフォーム」が2月16日に成田氏によるオンラインセミナーを実施し、批判が噴出している。同セミナーでは昨年10月にも成田氏のオンラインセミナーを実施し、好評だったことから再び開催する運びとなったようだが、「問題発言を繰り返しているような人物を神奈川県は起用するのか」などと厳しい声が飛び交っている。
「研究者、事業者、執筆者などの肩書で、イェール大学助教授や半熟仮想株式会社代表などさまざまな顔を持つことから、メディアは“気鋭の経済学者”ともてはやしてきましたが、過激な発言を受けて、今後はしばらく起用を控えるでしょう。とはいえ、ひろゆき氏や堀江貴文氏など、成田氏を高く評価している著名人も少なくないので、彼らのYouTubeチャンネルなどに出演することはあるでしょう」(テレビ局関係者)
日本のみならず海外でも批判の声が出ている状況において、成田氏に対する拒絶反応はなかなか収まらないだろう。
(文=Business Journal編集部)