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異性の前で不適切な発言…「男子校・女子校は社会規範の習得に難が生じる」説を考察

取材・文=文月/A4studio、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト
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「gettyimages」より

 男子校女子校では校内で同世代の異性の存在を意識する必要がないため、勉学や部活動など興味があることに一心に打ち込めるといった、学生が得られるメリットが多いという声は以前から聞かれる。一方、異性と接する機会が少ないことで社会性が身に付きにくい可能性があるという声もある。例えば、少し前にTwitter上でこんな投稿が一部で話題になっていた。

<男子校に進学される皆様へ、公立小学校・中学校で養われた男女共存の空間における社会規範を大切にしましょう。男子校であっても、無制限に発言することが許されるわけではありません。適切な節度を保ち、注意を払うことで、将来の社会人生活や異性との関係構築にも違和感なく対応できるはずです>

 このツイート主は、男子校は同性しかいないので同質性が高く、居心地がいい空間が形成されるものの、公共の場で異性に対して配慮に欠く言動をしてしまうなど社会規範の習得面で遅れが生じてしまう可能性もあると指摘している。そこで今回は大学ジャーナリストの石渡嶺司氏に、男子校、女子校に通うメリットやデメリットについて聞いた。

性の社会規範はそこまで形成されづらくない?

「私自身も男子校出身なので、より共感できるのですが、共学校に比べ、スクールカーストが形成されにくい面はあるかと思います。スクールカーストは、成績がいい、スポーツができるといった客観的に見てわかりやすい観点から形成されますが、共学校の場合、さらに異性にモテるかどうかも観点に加わります。男子校、女子校は異性がいないので、その分スクールカーストの形成は共学校に比べ緩やか。同性しかいないので、モテるかどうかといったことに気兼ねすることなく、ノビノビと学べる環境には違いないでしょう」(石渡氏)

 しかし、異性を気にしなくてよいという環境は、性に対してオープンな空気感を醸成しやすい側面もあると石渡氏は指摘する。

「男子校のほうが性に対しては開放的になりやすいものの、女子校に関してもあまり実情は変わらないですね。やはり異性に対する人間関係の構築の経験が薄くなってしまうので、パブリックな場でも性規範にそぐわない発言、行動をしてしまうクセは付いてしまう可能性はあります」(同)

 とはいえ男子校、女子校では社会規範が身に付かないと決めつけてはいけないという。

「男子校、女子校に通う生徒のなかには、そもそも異性が苦手だという理由で入学してくる人もいます。また異性との接し方を経験するうえでは小学校時代のほうが大事かもしれません。公立小学校では生徒の半数が異性なので、個人的には、中学校以降が男子校、女子校であるかということより、小学校時代のほうが重視すべき時期かと思います」(同)

男子校は昔のまま、女子校は先進的な価値観に

 もちろん男子校、女子校の出身者であるかどうかに関係なく、異性との人間関係をすんなり構築できるかどうかには個人差がある。

「男子校、女子校出身者は、異性との人間関係がうまくいかなかったときに、『男子校(女子校)出身だから異性の気持ちがわからない』という言い訳ができてしまいます。それが積極的に異性と関わろうとしない免罪符になってしまうので、よりいっそう異性との溝ができてしまうというケースもあるでしょう」(同)

 異性とのコミュニケーションの取り方について、男子校、女子校で教育は行われていないのだろうか。

「男子校では、2010年ごろから立教池袋中学・高校をはじめとする進学校で、先進的な性教育を施すところもありますが、一人ひとりの生徒すべての面倒を見きれるほど変革できているかというと微妙です。

 一方、女子校はというと、特に首都圏、関西圏の学校では、性教育も含めてキャリア問題についても敏感であり、女性の社会進出に向けた意識改革も進められ、特別講座も開催されています。こういった取り組みが直接的に社会規範を形成することにつながるというわけではないかもしれませんが、女性のキャリア、働き方について学生のころから強く意識できるようになるのではないでしょうか」(同)

地域のイベントに参加するなどして異性と交流を

 当然ながら、学校以外の場では異性と関わる機会はいくらでもつくることができる。

「男子校、女子校に通っていても、学校から外に出れば異性と接する機会はいくらでもあります。いずれにしても男子校、女子校に通うという選択をした以上、最低限は異性との接し方を学ぶ場を設けることは必要となるので、保護者の方々はその点を頭に入れておくとよいでしょう」(同)

 また、男子校、女子校に通うメリットも多いと石渡氏はいう。

「男子校、女子校には大学進学実績が良い学校が多く、学業に関しては真剣に集中して取り組める環境にあります。また、同質性が高く共学に比べてスクールカーストの形成も緩いため、居心地がいいコミュニティになりやすいはずです。そのため仲間意識、協調性も育みやすく、学生時代に築いた人間関係は一生の財産となるでしょう。男子校、女子校に通うメリットは間違いなくあるので、異性との付き合いなどデメリットが懸念される場合は、家庭でお子さんをサポートできるか熟考したうえで受験すべきかを判断してみてください」(同)

(取材・文=文月/A4studio、協力=石渡嶺司/大学ジャーナリスト)

石渡嶺司/大学ジャーナリスト

石渡嶺司/大学ジャーナリスト

編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。

Twitter:@ishiwatarireiji

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