師走を迎えた12月1日、2015年4月入社の大学3年生の就職活動が解禁になったとのニュースが一斉に報じられました。
そもそも、「就職活動の解禁」という言葉自体にやや違和感を感じずにはいられませんが、おそらく、企業の過剰競争を避けるためと、学生の学業への専念を図るため、という目的があってのことと思われますので、ここでは特に固執しません。
さて、アベノミクスによる景気回復政策は新卒採用にも少なからぬ影響があるようで、就職情報サイト大手・マイナビの調査によると、調査対象約2000社中、「15年春入社の採用数を大幅に増やす、または、多少増やす」と答えた企業は前年より2.2ポイント増えて、13.3%に及んだとのことです。
また、採用する企業側としては、優秀な人材を数多く効率的に集めたいということもあり、年々「内定」ないし「内々定」を出す時期が早まりつつある、との調査結果もあります。
ところで、毎年、「内定」通知に一喜一憂したり、羽目を外してバカ騒ぎをした結果、「内定取り消し」におびえたりする学生の様子がメディアなどでは取り上げられています。
「労働力を提供し、その対価として賃金を得る」、これが企業と従業員との間で締結される労働契約の本質ですが、「内定」の段階では勤務もしませんし、もちろん賃金ももらいません。
●内定=正式な労働契約
では、「内定」とは、法律上どのような権利義務関係を生じさせるものなのでしょうか。
大学生の新卒採用の場合、通常、3年生の12月から4年生にかけて採用のための筆記試験、面接等の選考を受け、その後、4月以降に「採用決定通知」を「内々定」、または「内定」といったかたちで口頭により通知され、さらに10月頃に正式に文書で通知されるという過程を辿ることとなります。
このような場合における「内定」は、判例上、「始期付・解約権留保付労働契約」と解されています。
ここで注意しなければならないのは、「内定」とは「予約」や「仮」といったものではなく、内定者と企業との間の立派な「労働契約」であるという点です。契約である以上、当事者を拘束するものですので、勝手に破棄したり無視したりすることはできません。
もっとも、「労働契約」といっても実際に内定者が勤務を始めるのは翌年の4月からということになりますので、「契約の始まりの時期を指定する」という意味で「始期付」となりますし、企業側もさまざまな事情で「内定」を取り消さなければならない場合もあるでしょうから、「内定を取り消す権利を留保する」という意味で「解約権留保付」となるわけです。
●「内定取り消し」への高いハードル
では、企業側はこの「解約権」に基づいて、実際に「内定」を取り消すことができるのでしょうか?