太陽光の10倍!?経産省「再生エネ“本命”は洋上風力発電」
発電量は太陽光の10倍?
国内の再生エネの中で、潜在的開発可能量でも洋上風力発電は群を抜いている。環境省が昨年4月に発表した「再生可能エネルギー導入ポテンシャル調査」を見ても、洋上風力発電の15億7000万kWは、陸上風力発電の2億8000万kW、太陽光発電(非住宅系)の1億5000万kW、地熱発電と中小水力発電1400万kW台と、比較にならないほど大きい。
今回の実証研究事業を企画した経産省の関係者は、「もはやブームになっているので、FITでは当面の間メガソーラーが増え続ける。しかし、再生エネの本命は洋上風力発電」と断言する。
そして、特に浮体式は「世界的に技術が確立していない分野だが、わが国お家芸の造船技術をそっくり応用できる。海洋の厳しい運転環境にも対応できる素材技術も、わが国は豊富に蓄積している。技術が汎用化している太陽光パネルと違い、中国勢が容易に参入できる分野ではない」と、浮体式洋上風力発電推進の根拠を説明している。
したがって、浮体式でいち早く世界最先端技術を確立すれば、世界の洋上風力発電市場でも、競争力を発揮してシェアを拡大できる。また、浮体式の構成部品は約2万点といわれ、産業の裾野が広い。当然、国内経済への波及効果も高いのだ。
ガラパゴス感覚の再生エネ計画が吹き飛ぶ
風力発電では、ブレード(風車の羽)を長くして出力を大きくするほど、1kW当たりの発電コストが低くなる。陸上風力発電ではブレード運搬の制約から2000kW級が限界だが、ブレードを船で運搬できる洋上では2000kW級以上が容易に可能だ。
このためドイツのシーメンス、デンマークのヴェスタス、フランスのアルストムなどの風力発電機大手は、そろって6000-7000kW級の洋上向け大型風力発電機の開発にしのぎを削っている。三菱重工業が7000kW級の浮体式洋上風力発電機の開発を急いでいるのも、そのためだ。
ところが国は、世界のこの趨勢に無関心だった。
洋上風力発電に関して経産省は元来、12年から千葉県銚子沖で着底式の2400kW風力発電機実証試験を行い、5年後ぐらいに浮体式の実証試験を計画していた。環境省も13年から長崎県五島沖で浮体式の2000kW風力発電機実証試験を計画している。しかし、6000-7000kW級は眼中になかった。
相変わらずの独善的なガラパゴス感覚だった。国のこの非常識計画を打ち破ったのが東日本大震災だった。
「風力発電機産業の集積」を震災復興の重点策の1つにしたい福島県の要望が、震災復興予算の中で偶然認められたことと、丸紅がたまたま欧州の洋上風力発電市場に参入していたことが、今回の実証研究事業開始につながった。
前出の経産省関係者は、次のように胸を張る。
「産学チームは、東京大学をテクニカルアドバイザー役に、大手総合商社、重工業メーカー、大手ゼネコン、大手素材メーカーなどの『オールジャパン』で構成されている。わが国重工業の底力を発揮するチャンスだ」