太陽光の10倍!?経産省「再生エネ“本命”は洋上風力発電」
世界で勝つための実証研究
事業計画では、福島県沖に3基(2000kW×1基、7000kW×2基)の大型風力発電機を2015年度までに建設し、実証運転により浮体式洋上風力発電所の安全性、信頼性、経済性などの評価を行う。
今回の研究で産学チームが実証に使う、7000kW級の浮体式洋上風力発電機は三菱重工業が現在開発中。浮体技術には、三菱重工業、アイ・エイチ・アイ・マリンユナイテッド、三井造船の3社の造船技術を結集する。変電所は日立製作所、送電用の海底ケーブルは古河電気工業、鋼材は新日本製鐵などの先端技術を活用する。
実証運転が成功すれば、17年度から20年度にかけて、7000kW級の風力発電機を143基建設、原発1基分に相当する100万1000kWの商用運転に入る計画もあるといわれている。
水深の浅い沿岸海域が多い欧州の洋上風力発電は、海底に風車を固定する「着底式洋上風力発電」が主流。浮体式は次世代型洋上風力発電と考えられており、欧州では、ノルウェーが09年に建設した実証研究用の1基のみ。複数基を設置する今回の実証研究は、欧米でも注目されている。
風力発電機はコスト競争が激しい製品。デンマークのヴェスタスが世界最大の風力発電機メーカーに成長したのは、風力発電の100年以上の長い歴史と大規模な国内市場があったからだ。国内市場でコスト競争力を磨いて、世界市場で初めて競争できる製品になる。
それに対してわが国の風力発電機市場は、小規模で歴史も浅い。そのためか、09年末の世界シェアは1.3%しかない。
次世代型の浮体式風力発電機にかけるしかない
そんなわが国の風力発電機メーカーが、「世界で勝つためには今から次世代型の浮体式風力発電機に挑戦し、この分野の主導権を取るしかない」(洋上風力発電に詳しい東京大学大学院・石原孟教授)というわけだが、泥縄の感は払拭できない。
今月から始まった再生エネのFIT(固定価格買取制度)では、数千枚の太陽光パネルを隙間なく並べたメガソーラー(大規模太陽光発電所)に注目が集まっている。だが洋上風力発電なら、風力発電機1基で2メガW(2000kW)以上の発電ができる。
仮に5メガW級の風力発電機を250基並べた洋上風力発電所を建設すれば、250万kWの設備容量となり、発電効率が40%の場合でも原発1基分の出力規模になる。