秘密保護法に関しては、藤森克美弁護士が提訴した静岡訴訟、フリーランス表現者ら43名が提起した東京訴訟がすでに進行しており、今回横浜訴訟で口頭弁論が始まったことにより、3つの裁判がすべて審理に入ったことになる。
行政機関の長が特定秘密を指定し、その情報を漏らした者、あるいは情報を得ようとした市民を最高懲役10年という重罰に処すのが秘密保護法だ。秘密の中身は秘密なので裁判になっても明らかにされず、もし逮捕されて裁判にかけられても、当事者が具体的に何を犯して罪に問われているか知り得ないまま、最長10年間刑務所に入ることになる。
しかも、秘密指定や運用に関して、完全に独立した第三者機関による監視はない。事実上、政府が全権を掌握することから、ヒトラー政権が成立させた全権委任法(授権法)や戦前戦中の治安維持法にたとえる人もいるくらいだ。
ところがテレビをはじめとする大手マスコミ各社は、秘密保護法について伝えるときに「公務員などを罰する秘密保護法」と表現し、特定の人が対象であって一般市民には関係ないかのごとく印象操作しているようだ。特にNHKでそのような傾向が見られる。
そんなテレビ報道よりも、横浜訴訟の口頭弁論で意見陳述した一般市民3人の陳述内容のほうが法律の核心を突いていた。そもそも、国などを相手にした裁判では、裁判所は書類のやりとりだけで済まそうとし、実際に原告が法廷で意見を述べることを許す例は少ない。今回は、その貴重な生の声を紹介する。
●「大本営発表のように国民をコントロールする」
口頭弁論には他県からも傍聴者が駆けつけ、横浜地裁502号法廷の傍聴席は8割方埋まっていた。原告13人のうち3人が、張り詰めた空気の中で意見を陳述した。最初は、主婦の浅賀きみ江さん(65歳)。
「秘密保護法は、日本国憲法の根幹である基本的人権を尊重する第13条、知る権利、思想・信条、表現の自由を保障する第21条にも反し、憲法違反です。日本国憲法は、かつての大日本帝国憲法下、天皇制ファシズム体制、治安維持法下で国民の知る権利、表現の自由等を剥奪し、教育・新聞・芸術・宗教・産業などを無謀な侵略戦争に総動員したことによる反省に由来しています。