【IBMの退職強要の録音データ(全日本金属情報機器労働組合<JMIU>日本IBM支部公開)】
今回は、日本企業のリストラの方法と対策について考えてみます。
従業員に辞めてもらう意味でのリストラには2種類あり、筆者はそれぞれ「見えるリストラ」「見えないリストラ」と呼んでいます。
まず、見えるリストラとは、会社が辞めてほしい人を選んで「お前はクビだ」と宣告して解雇するもので、誰が見ても「リストラをやっているな」と、はっきりわかるタイプです。会社が対象者を好きに選べて単刀直入にクビにできるわけですから、とてもシンプルです。しかしシンプルな分、これを実施するにはとても厳しい条件が課せられます。
見えるリストラが難しい場合、一般的に会社はどのように雇用調整するのでしょうか。見えるリストラができない以上、当然ながら水面下でひっそり行われることになります。「クビだ」と通告せず、対象者も絞らずに行われるリストラであり、それこそが「見えないリストラ」なるものです。
「見えないリストラ」の手法
以下に、一般的な「見えないリストラ」のプロセスを以下に記します。
1.必要なコストカット額から退職させる従業員の人数と割増退職金などの条件を詰め、早期退職の募集をかける
ただし、これだけだと当然ながら「できる社員」が待っていましたとばかりに割増退職金を手にしてライバル社に転職するリスクがあります。一方で、辞めてほしい社員ほど、がんばってしがみつこうとするでしょう。従って、同時並行で以下の工程を進めているはずです。
2.早期退職対象者の選別を行い、辞めさせてはいけない社員、どちらでもいい社員、辞めさせるべき社員に分類する
誰が決めるのかは会社により異なりますが、筆者の知る限り、事業部門側で決定しているケースが多いようです。やはり誰がどれだけ貢献しているかは、現場で見ていなければわかりませんから、マネージャーなどの監督的立場にある人が選別することになるでしょう。とはいえ、管理部門も恐らく最終チェックというかたちで関与し、勤怠に問題のあるような社員はこの機に退職させようとするはずです。
3.意思確認のための面談をし、選別結果に基づいて誘導する
「今後の進路について意思確認をしたい」という名目で、対象者(これは全員の時もあれば、残したい人、辞めさせたい人に限定する場合もあります)に管理職が面談を行います。そこで、例えば会社としては絶対に残ってほしい人が早期退職への応募を検討しているとわかれば、全力で慰留します。