株式市場ではアノマリーと呼ばれる、投資の参考に用いられるデータがある。辞書には「理論では説明できない株価の規則的現象」とあるが、要するに過去に高い確率で生じた、値動きのパターンと表せるのだろう。
「昔は、二日新甫は荒れると言ったものだが、今でも取引が1日から始まらない月は警戒する」
「景気後退局面に入ると年後半(7月以降)に大底を形成しやすく、そこが買い場になりやすい」
「週末安になる時は相場全般の地合いが悪いと考える」
60代から70代の個人投資家の方々から伺った話だが、経験豊富なシニア投資家でアノマリーを意識、活用する方々は結構おられるようだ。もっとも、「節分天井彼岸底」のように、よく知られていても近年はあまり当てはまらないものもあるので、鵜吞みにせずに、どのくらい的中したかを検証する必要はある。
その意味からも過去20年以上、当たっているアノマリーになると、そうあるものではなく、記憶しておいて損はあるまい。指標を調べていて、たまたま発見したのだが、これから紹介するものは、令和元年夏以降の東京株式市場の不穏な展開を示唆していることになる。
始値と最安値
年間ベースで日経平均株価の四本値(始値、最高値、最安値、終値)を見ると過去24年間(1995年~2018年)で、始値と最安値が一致したことは一度もない。通して見れば、大発会の終値を下に抜ける局面は必ず起こっていることになる。一年を通じて株式市場が右肩上がりで推移することが、いかに難しいかを示しているのだろう。
ところが今年は現在のところ、アノマリー破りの動きを維持しているのだ。2019年の6月末までの平均株価の最安値は1月4日の1万9561円であり、これがそのまま最安値になっている。
年間の平均株価の変動率からも、今年前半の特異性は際立っている。日本経済の低成長が定着した過去20年の、平均株価の年間変動率は始値と比較して高値、安値ともに平均16%になる。年を通じてみれば、年初の水準から、それぞれその程度上昇、下落しているわけだ。
しかし今年は高値のほうは14%上昇(2万2307円)しているのに対して、安値のほうはゼロということになる。アノマリー通りになるのならば、年末までに平均株価は2万円を割り込む局面がやってくることになる。