もっとも裏読みをすれば、そろそろ法則破りの年になるとも捉えられる。あるいは今年がそうなると考えて、腕を撫す投資家もいるかもしれない。競輪通としても知られた作家、故寺内大吉氏が唱えていた、死に目(しばらく出ていない目)をしぶとく狙う手法であろう。
なるほど時代を遡れば年間の平均株価の始値と最安値が、一致する年はそれなりにある。1950年代、1960年代、1970年代には、それぞれ3回、そして1980年代、1990年代に各1回と合わせて11回あった。確率はこちらも16%であり、そろそろ出現しても不思議はないようにも思える。
ただ過去に寄り安になった年の経済環境を照らし合わせると、再現を期待するのは無理があるようだ。現在とは市場を取り巻く環境があまりにも違うからだ。1980年代までは年率5%を超える高度経済成長の下、特に景況が良かった年に起こっている。最後に出現した1994年にしてもバブル景気の残り香が漂っていた時代だ。いずれの年も景気拡大(回復)局面の早い時期、景気が若い段階であったことも共通している。
国内では牛の涎のようなアベノミクス景気の終焉が指摘される上に、今秋には消費税の増税を控えている。国外では米中間の貿易戦争が進行、深刻化している。内外に懸念要因が山積するなかで、実体経済を敏感に反映する株式市場の代表的な指標が、パターンを覆すような動きをすることは考えづらい。
(文=島野清志/評論家)
【平均株価の年間始値と同最安値が一致した年の経済環境】
1951年・1952年(朝鮮戦争特需・戦後復興の本格化)/1958年・1960年(岩戸景気・経済成長率10%超)/1968年・1969年(いざなぎ景気・消費革命)/1972年(列島改造景気・インフレ進行)/1976年・1978年(設備投資ブーム・経済成長率5%台)/1988年(バブル景気・Qレシオ)/1994年(景気底打ち感・PKO相場)