台風による自宅の損害、確実に補償を受けるための火災保険選び&保険請求時の注意点
ポイント2:補償される額を確認する
続いて2つ目は、「補償される額」を確認することだ。かつて1998年の損害保険料率自由化前に主流であった「住宅総合保険」の水災補償は最大で火災保険の70%まで。また「住宅火災保険」に水災補償がないのが一般的だった。
現在、大手損保が扱う火災保険の水災補償は、損害額から免責額(自己負担額)を差し引いて損害全額を補償するものが主流となっている。免責額とは、保険請求する際に発生する自己負担金で、免責額を10万円と設定すると、被害額が10万円以下だった場合、保険を請求するメリットがなくなってしまうということ。
免責額は、災害ごとに個別に設定することができる商品が多く、その額は、免責なし~10万円と複数から選択できる。
なお、実際にかかった額に関係なく契約時の一定額が保障される生命保険と異なり、損害保険は「実損填補」がキホン。損害が発生したときに契約時の保険金額を上限として、実際の損害額が保険金として支払われる。
したがって、火災保険を契約する際は、建物や家財の評価額と保険金額を同じ(これを「全部保険」という)にすることが重要だ。例えば、家財の合計評価額が300万円しかないのに500万円の保険に加入すると、保険金が満額受け取れないケースもある。保険料節約のためにも、この考え方は理解しておきたい。
<保険金の支払い事例(A損保の家庭総合保険の場合)>
■契約内容
・用法:専用住宅
・構造:T構造
・建物保険金額:2,000万円
・家財保険金額:1,000万円
・風・雹・雪災面積金額(自己負担額):0円
■被害
台風によって建物と車庫の屋根が破損し、屋根が破損したことで雨が吹き込み、建物内の家財に被害があった。
■損害額
・建物(再調達価額による屋根の修理費)…300万円
・家財(再調達価額による家財の修理費)…100万円
■支払われる保険金の額
・建物の損害保険金 300万円(建物の修理費―免責額0円)…(1)
・家財の損害保険金 100万円(家財の修理費―免責額0円)…(2)
・災害時諸費用保険金 120万円(300万円+100万円)×30%(支払限度額500万円)…(3)
・(1)+(2)+(3):合計520万円
ポイント3:保険請求のための手続きの流れを確認
最後に3つ目は、「保険請求のための手続き」を確認しておくことである。被災した場合、まずは損保会社や契約した代理店に連絡を取るだろう。損保会社には、事故受付の専用窓口があり、多くの場合24時間365日体制で電話対応を行っている。
その際に、契約者名や保険証券番号、損害発生日時、被害の状況などを質問されるので、わかる範囲でできるだけ詳しく報告するのがベストだ。ただ、保険証券を紛失していたとしても、保険金の支払いに支障はない。
また、家屋等の流失・焼失等によって損保会社との保険契約に関する手掛かりが消失し、わからなくなった場合は、日本損害保険協会の「自然災害等損保契約照会センター」に電話してみるとよい。災害救助法が適用された地域にお住まいの方なら、契約先の損保会社や契約内容を照会してくれる。
顧客からの連絡を受けて、損保会社の調査員が被害調査のため訪問することになる。その際、訪問時までに、片付けや修復をしなければ危険な場合や防犯上の問題が出るような場合、片付けてしまっても問題はない。その際も、可能なかぎり、撤去前の状況証拠として写真を撮影しておけば、損害額の査定をスムーズに進めることができる。写真は、「被害を受けた建物や家財の全体(建物の場合は建物の全景写真)」と「損傷箇所が確認できる写真」があると有効だ。
さらに、保険金請求には複数の書類が必要なのが一般的だが、準備するのに時間も手間もかかる。被災してそれどころではないというケースもあるだろう。そこで、災害救助法の対象となる地域の方については、必要書類を一部省略できる場合もあり、その際は原則として、被災したことを証明する「罹災証明書」が必要となる。
罹災証明書は、住所地のある自治体が発行するもので、建物の被害の原因と状況が記載される。前述の被災者向けの支援金の受け取りや優遇融資の申し込み、仮設住宅への入居、社会保険料や税金の減免等々、さまざまな手続きで利用できるので、速やかに発行してもらうようにしたい。
なお、台風などの水災は通常であれば、保険請求から2~3週間で保険金が払われる。しかし、今回の被害は甚大かつ広範囲にわたっているため、手続きが通常より遅れる可能性もある。保険だけでなく、イザというときの預貯金など、すぐに使えるお金を持っておくことも非常に重要だと再認識させられたのではないだろうか。
(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)