(2)貸し借り(資産の管理・運用と借り入れ)
資産運用、融資などのお金の貸し借りは、ユーザーにとって大きな利益や損失を生むだけに、サービス単価が高くなりやすく、大きなビジネスの可能性はある。それだけに金融当局からの規制も厳しく、サービスの設計と参入が難しい。また、資産運用については結局のところ、ユーザーが儲かったのかどうかという実績がものをいう。相場が上がり基調なら普及も弾むが、相場が低調なら結果が出ずに苦しむことになるだろう。
借り入れは、消費者にとっては住宅ローン、商品購入のファイナンス、消費者ローンで込み合った競争環境であり、新しいサービスの余地は少ないようにみえる。そこで、小規模事業者を対象にしたサービスに可能性を見いだしたいが、日本では地方金融機関が手厚くサポートしているので、そこにどう分け入るかだろう。あるいは、地方金融機関がフィンテックを使って全国的サービスを展開する可能性もある。
(3)保険(リスクの変換)
通常の保険については、すでにネット化が進んでおり、それらのネット系保険企業が規制当局と打ち合わせしつつフィンテックの新しい動きを取り入れていくだろう。従って、よほど画期的なサービスでないと新規参入はかえって難しいかもしれない。
ただし、日本の公的な年金や医療保険などの充実した社会保障制度が破綻し、継続できなくなったリスクに備える金融サービスは、可能性があるかもしれない。たとえば、「長生きリスク」に備える年金などである。ただし、こうした日本の公的制度の破綻を前提にしたサービスは、日本の金融当局が認めにくいので、海外での運用などが伴いそうである。お金持ちの個人がFXサポートに熱心なのも、潜在的にそういうニーズがあるからだろう。
IT技術
それでは、次にフィンテックに使われるIT技術のポイントをみてみよう。結局のところ、モバイルとデータ処理技術の2つである。データ処理技術の中心は、ビッグデータと人工知能(AI)であり、それを組み合わせた技術が活用される。
前述の金融の各分野との関係でいえば、個人と密接に結びついているモバイル技術は決済、データ処理技術は貸し借り(資産の管理・運用)に使われる可能性が高い。
ちなみにブロックチェーンとビットコインについては、一部に混乱した理解がみられる。ブロックチェーンは多くの場合、分散型台帳(distributed ledger)技術を指している。ビットコインは、分散型台帳技術の特殊な応用例である。