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深野康彦「あなたと家族と日本のための、お金の話」

若者の税金負担、同年収の高齢者よりずっと重く…隠れた世代間格差問題が放置

文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー
若者の税金負担、同年収の高齢者よりずっと重く…隠れた世代間格差問題が放置の画像1「Thinkstock」より

 3月27日、2017年度予算とともに同年度の税制改正法案も可決されました。今回の税制改正の目玉は、パート主婦らの就労を後押しするため、配偶者控除の年収要件を引き上げて所得税減税の適用対象を広げたことです。配偶者控除は満額の38万円が受けられる要件を配偶者の給与収入が「150万円以下」の人とし、現在の「103万円以下」から広げられました。

 また、世帯主の年収が1120万円を超えると控除額が徐々に減る仕組みも導入されます。導入は18年からになります。改正内容には賛否両論がありますが、これまで配偶者控除は改正しない聖域のように扱われていたことから、一歩前進したといえるでしょう。

 施行前に「その次」を述べるのは憚られますが、政府が行っている「働き方改革」の流れを考えれば、高齢者の税優遇を改めるべきだと思われます。

 いくつかありますが、1つは公的年金を受け取りながら働いている人の控除の二重取り、正確には「公的年金控除」と「給与所得控除」の両方を利用できるということです。年齢が65歳未満の公的年金等控除額は最低70万円、給与所得控除額は年齢にかかわらず同65万円になります。

 仮に63歳のAさん、25歳のBさんがいるとします。ともに年収は330万円としましょう。Aさんの年収の内訳は、公的年金120万円に給与210万円、Bさんは全額給与とします。

 このケースでは、Aさんが利用できる控除額は、公的年金控除70万円と給与所得控除81万円の合計151万円です。一方、Bさんは給与所得控除だけですので117万円となり、その差は34万円になります。仮にその他の控除は基礎控除38万円だけとすれば、Aさんの所得は141万円、Bさんは175万円となり、所得税率5%をかけるとAさんの税金は7万500円、Bさんは8万7500円と1万7000円も異なるのです。

 仮にAさんが65歳以上だとしたら、公的年金控除額は最低120万円に増えることから、年収が内訳ともども変わらなかったとしても控除額は合計で201万円。基礎控除を差し引けば、Aさんの所得は91万円となり、税金は4万5500円まで減少するのです。Bさんと比較すれば、その税額の差は4万2000円にもなるのです。わかりやすい比較をするために、社会保険料などを一切考慮せず現実的ではない例をあげたことはお許しください。

 人手不足を解消するためには高齢者、女性の雇用を増やすことといわれています。しかしながら、同じ収入なのに控除額、ひいては納める税金が大きく異なるという現状を変えなければ、世代間格差、現役世代のワーキングプアの問題などは解決できない気がしてなりません。少々気が早いですが、来年度の税制改正では、ぜひメスを入れてもらいたいと思います。
(文=深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー)

深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー

深野康彦/ファイナンシャルリサーチ代表、ファイナンシャルプランナー

AFP、1級ファイナンシャルプランニング技能士。クレジット会社勤務を3年間経て1989年4月に独立系FP会社に入社。1996年1月に独立し、現在、有限会社ファイナンシャルリサーチ代表。テレビ・ラジオ番組などの出演、各種セミナーなどを通じて、投資の啓蒙や家計管理の重要性を説いている。あらゆるマネー商品に精通し、わかりやすい解説に定評がある。

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