前述したように、ユーチューバーは動画の再生回数によって収入が決まる。多くの人に注目される動画をつくり、視聴者を増やすためにお金を使うのであれば、たとえ1000万円以上の大金でも理論上は経費ということになるわけだ。
「経費に限度額はありません。お金をかけてコンテンツをつくり上げることによって売り上げが増え、利益に還元されている。そういう証拠があれば、経費として認められる可能性はゼロではありません。500万円の利益のために1000万円の経費を使えば『おかしいじゃないか』という話にもなりますが……」(同)
ユーチューバーの出費が経費になる3つの条件
もっとも、売り上げを上げるために必要な費用なのかどうかの判断は非常にあいまいで、特にユーチューバーの経費については明確な線引きが難しいという。しかも、仮に経費として計上できる可能性があっても、それは「自殺行為」だと野口氏は語る。
「『こうやって注目を集めて稼いでいるんだ』という論拠があれば、主張も理解できます。しかし、私は国税局が簡単に『はい、そうですか』と納得するとは思えません。派手にお金を使うのは、自ら『税務調査に来てください』と言っているようなもの。私の顧問先なら、おすすめしませんね」(同)
野口氏によれば、経費として認められるための条件は次の3点だという。
(1)経費の内容を説明でき、さらに他者から見ても納得がいく客観性
(2)文書や客観的な証拠で裏付けがとれている
(3)結果的に売り上げが上がっている、再生回数が増えたなどの合理性
客観性や合理性が問われる以上、たとえばギャンブル専門チャンネルをうたいながらアミューズメントパークを訪れた動画をアップし、そこでの出費を経費に計上しようとしても、認められる可能性は低くなる。
しかし、逆にいうと、上記の3点を満たして整合性が取れていれば、ヒカキンの1000万円以上の買い物も経費にすることは可能というわけだ。
そうなると、よからぬ考えも浮かんでしまう。たとえば、ユーチューバーでもなんでもない筆者が「動画制作のため」などといって以前から欲しかった商品を購入し、そのレビュー動画を「ユーチューブ」にアップさえすれば、無事に経費として認められるのだろうか。
「そこに客観性を示すことができるのであれば、認められる可能性はないとはいえません。しかし、それを2回、3回と重ねると難しくなると思います。なぜなら、それによって売り上げや再生回数が増加しており、ビジネスとして成立していることを示さなければならないからです。
そこがあいまいであれば、『一回投資してダメだったのに、なぜ投資し続けるのか? それって仕事じゃなくて趣味だよね。だから、経費として認められません』という判断になるのではないでしょうか」(同)
念のために言うと、これらはあくまでユーチューバーがコンテンツづくりに使ったお金を経費に計上した場合の話だ。いずれにせよ、「どこまで経費で落とせるか」を知るためには、自らユーチューバーとなって確かめるしかないのかもしれない。
(文=藤野ゆり/清談社)
【※1】
個人の価値を仮想株式で売買するフィンテックサービスのひとつ