「年金を受け取り始める年齢を70歳以降まで遅らせる制度を政府が検討」という報道の見出しにギョッとした人は多いだろう。
実際には、これはあくまで今ある「年金の繰り下げ支給」の制度を変更するかも、という話。65歳での受け取りをひと月単位で先送りにすれば年金額が上乗せで増える制度で、現状では70歳まで受け取り延期ができるのを「さらに伸ばしては」という提案なのだが、そうは聞こえなかった人も多いのではないか。
なんといっても、年金や医療・介護にかかわる社会保障費は年々増大、「そのためにも消費税を上げざるを得ませんよ」という説明を、これまでさんざん聞かされてきたのだから。
しかし、そんな社会保障費の中でも、唯一景気がよさそうなところがある。支払いが減り、給付も増えているのだ。それが、雇用保険だ。
まず2017年4月には、雇用保険料率が引き下げになった。さらに、もらえるお金も増えた。失業時にもらえる基本手当日額(いわゆる失業手当)が2017年8月から引き上げられた。最高額が45歳以上60歳未満の人はプラス430円の 8205円、30歳以上45歳未満の人はプラス380円の7455円に、30歳未満の人はプラス340円の6710円。なお、最低額のほうも1832円から1976円に引き上げられた。
払うお金が減って、もらうお金が増えたのである。今の日本の状況を考えると、大盤振る舞いに見える。実際には、雇用保険の積立金残高が潤沢にあり、払っても困らないということらしい。
「(年金や医療費など)ほかの社会保険と違い、受給期間が短いことが大きい」と、社会保険労務士の井戸美枝氏。全体で見ても、2015年度の社会支出の総額は119兆2254億円で、対前年度増加額は2兆7079億円だが、その中身を用途で分けてみれば「高齢」と「保健」が8割を占め、「失業」は0.8%、「積極的労働市場政策(教育訓練給付など)」が0.6%ほど。しかも、どちらも前年度より支出割合は減っているという(国立社会保障・人口問題研究所「平成27年度社会保障費用統計の概要」より)。
働く人の多くが雇用保険のお世話になっているが、先に述べたように、このところ制度の変更が相次いでいる。せっかく加入しているのに、恩恵に気付かないのはもったいない。2017年から2018年にかけて改正された中身を見ていこう。
正社員以外でも育児休業や介護休業を取りやすく
2017年1月からは、パートや派遣、契約社員など有期契約の労働者が育児休業や介護休業を取りやすくなった。育児休業なら、申し出の時点で、同一の事業主に引き続き1年以上雇用されていること、子どもが1歳6カ月に達する日までに労働契約の期間が満了することが明らかでないこと、この2つの条件を満たしていれば取得できることになった。
また、収入が減ってしまうことへの対策として、雇用保険より育児休業給付を受けることもできる。受け取れる金額は、育休開始前の日額賃金(ただし上限あり)×休んだ日数×67%(6カ月まで)もしくは50%(6カ月経過後から)。受け取れる上限額は、29万9691円(6カ月まで)、22万3650円(6カ月経過後)。支給期間は子どもが1歳に達するまでだが、それまでに保育所に入れず育休を延長する場合は1歳6カ月に達するまで延長できる。
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